今野さんが“タダのファン目線”でクラブ関係者らに逆取材を敢行するシリーズ企画から一転、今野さんが行きたい場所をただただ訪れるという、迷走する雑談コーナーとなった本連載。今回は今野さんが最近、気になっている「フットゴルフ」を、フットゴルフ日本代表として2018年にW杯にも出場された軍司和久さんと一緒に体験! ……する予定でしたが、会場の大宮第二公園が取材前日に豪雨でまさかの冠水。ということで、来月の体験に向けて、まずは軍司さんにいろいろと競技についてお話をうかがいました。
サッカーとフットボールのせめぎ合い
今野「おはようございます。今野です」
軍司「よろしくお願いします! 」
今野「え~っと、何から話を聞こうかな。フットゴルフという名称で正しいんですかね?」
軍司「そうですね。結果的に、そこに落ち着いたと言いますか」
今野「いろんな言い方がありそうですよね」
軍司「日本に入ってきたときにはフットボールゴルフと言っていたんですけど、世界でも名称統一して普及していこうという流れがあり、フットゴルフになっています」
今野「サッカーって言っているのは日本とアメリカぐらい、と聞いたことがあります」
軍司「そうなんですよね」
今野「だから俺も一生懸命フットボールって言ってたんですけど、なんか尖っている人間みたいな感覚になってきて(笑)。結局、サッカーに流されました」
軍司「フットボールのほうが格好いいと言うか、先進的なイメージがありますよね」
今野「でも、フジテレビをCXと言うような感じじゃないですか」
軍司「まさに(笑)」
アルゼンチンW杯で魅了される
今野「軍司さんは、いつごろからフットゴルフを?」
軍司「もともと女子プロゴルフの大会運営の仕事をしていて、そこで新しい仕事に取り組もうということになり、上司が『お前サッカーやってたんだから、フットゴルフの仕事やってみたらいいじゃん』と言ってくれたんです。そこで調べてフットゴルフの存在を知ったのですが、ゴルフトーナメントの運営経験と僕自身の競技経験の両方を生かせるという意味で自分に向いてるかもと思いました」
今野「へ~」
軍司「日本フットゴルフ協会に飛び込みで挨拶に行くところから始めて、その後、実際に試合を見に行って面白そうだと」
今野「なるほど」
軍司「それで2016年の1月にアルゼンチンで第2回のワールドカップがあって、そのとき協会の方から『一緒に行きましょうよ』と誘われたんです。さすがにアルゼンチンまでは行けないですよ、とか言ってたんですけど、当時の上司が『面白そうだから行ってきなよ』と言ってくれまして。現地で大会を見たら、みんなめちゃくちゃ楽しそうにやっていて。いますぐやりたいと思いました」
今野「ほ~」
軍司「それで、2016年の3月からジャパンツアーに参戦した感じです」
今野「いきなり?」
軍司「当時はプレーしてる人が少なくて、日本協会主催のツアーしか、試合としてフットゴルフをできる機会がなかったんです」
今野「当時は、どれぐらいの人がやっていたんですか?」
軍司「僕が出た大会は、40人ちょっとでした」
今野「なるほど」
軍司「自分なら絶対入れられると思って始めたんですが、やってみたらそんなことはなく、ボロボロでした。初出場したときの順位は27位だったと思います」
今野「ルールはゴルフと一緒ですか?」
軍司「まったく一緒です。ただ、バンカーは助走ができません。あとは、フリーキックを蹴るのと一緒。足の裏で転がすのや、甲に乗せてすくうのもダメです」
今野「アウトサイドは?」
軍司「大丈夫です」
今野「使うことあるんですか?」
軍司「けっこう使います。回転をかけて傾斜のある場所に止めたいときか、急に曲がっているコースに沿ってボールを曲げたいときとか」
今野「いまサッカーをやったら、フリーキッカーとしてものすごい優秀なんじゃないですか」
軍司「キックはかなりうまくなっていると思います(笑)」
今野「しかも、普段は起伏のあるグラウンドでやっているわけだから……」
軍司「おっしゃる通りで、少しでも凸凹があると蹴りづらいんですよ。だからサッカーをやってたときより、圧倒的に集中して一打一打を蹴るんです。ここまでボールと向き合うことって過去になかったと思うくらい。全身全霊を懸けて蹴っている感じはあります」
普段の練習方法は?
今野「みなさん、どういう練習をされているんですか?」
軍司「人それぞれですけど、プロゴルファーがやっているのと同じ感じですね」
今野「打ちっぱなしがないじゃないですか」
軍司「なので、理想は芝がある公園でボールを転がす。ゴルフのパッティングと同じで、5m、10m、15m、20mとボールを蹴って、どういうラインで転がったか見る。どのぐらいのタッチでどれぐらい距離が出るか、体に沁み込ませるというか」
今野「ほほ~」
軍司「あとは長いキック、50m、60m、70mでピタッと止められるように練習をするとか。僕の場合は近くに芝のある公園がないので、サッカーゴールのネットに向かってボールを蹴ってます。インドアのゴルフ練習場と一緒ですね。蹴ったボールの軌道は見えないけど、球筋を想像しながら打感を確かめる感じです」
今野「靴は?」
軍司「トレーニングシューズです。スパイクは禁止されています」
今野「格好は?」
軍司「一応フットゴルフの正装がありまして。ハンチング、襟付きシャツ、ハーフパンツ、靴下はハイソックスでアーガイル柄……と」
今野「クラシックなゴルフスタイルですね」
軍司「ただ、販売しているところがなくて」
今野「スポーツブランドで、あまり見ないですもんね」
軍司「やりたいけど服がないって感じになったので、僕らはいまゴルフをプレーするときに問題ない範囲で、動きやすい格好でやっています。徐々にフットゴルフが普及してきて、いまは見た目サッカーみたいな格好でも許してくれるようになりました」
今野「コースには、ゴルフをやっている人もいるんですか?」
軍司「そうですね。日本にフットゴルフ専用コースはなくて、基本的にゴルファーさんがプレーしているコースを間借りして、フットゴルフをやらせていただいている感じです。だから、迷惑をかけないように」
今野「肩身が狭いんですね」
軍司「それはあります(笑)。なので、ゴルファーとすれ違ったら『お疲れさまです』とご挨拶したり、ボールが飛んできて拾ったほうがいい場合には拾ったり。ボールロスされた場合は、一緒に探したりもしています」
フットゴルフ界ではジャブラニが人気
今野「1ホール何回くらい蹴るんですか?」
軍司「ゴルフと同じようなコースセッティングをイメージしてもらうと分かりやすいかと。パー3だと100ヤード。パー4だと150~200。パー5だと250~300ヤード。距離はゴルフの半分くらいですけど、打数は同じくらいです」
今野「初心者は、肉離れになりませんか?」
軍司「経験者でも多いですよ。僕もこの前、試合で肉離れを起こしましたから。思い切り蹴るので、足への負担が大きいようです」
今野「1打目で終わる人もいそうだなって。ボールはサッカーと一緒ですか」
軍司「はい。ただ、最新のボールがフットゴルフに向いているかと言うとそうでもなくて、いま、フットゴルフ界では2010年のジャブラニが流行っています」
今野「あの、やたらと無回転になった」
軍司「そうですそうです。あのボールと、2011年になでしこジャパンが優勝したワールドカップで使用されたスピードセルっていうボール、この2つが人気です」
今野「マイボールでやっているんですね」
軍司「そうです」
今野「でも、もう売ってないですよね」
軍司「そうなんですよ。だから、ヤフオクとかメルカリで買い漁る状態になっています。どんどん値段が上がって、3万円とか5万円じゃないと買えなくなっているんですよ」
今野「定価は?」
軍司「1万7000円くらいです……」
今野「無回転が騒がれたのはあの時期だけなので、あのボールは相当違ったんだろうとは思ってましたけど、フットゴルフで現役とは(笑)」
軍司「実際に蹴ってみると、他のボールよりもスピードが出て、飛ぶんですよね」
今野「トーキックもOKですか?」
軍司「大丈夫です」
今野「ヘディングは?」
軍司「大丈夫です(笑)」
今野「えっ!? いいんだ」
軍司「手を使わなければ大丈夫です」
今野「やることあります?」
軍司「たまに遊びで、あとちょっとでカップインってときに頭を使う人もいます」
今野「大宮第二公園は、普段からフットゴルフをしている人がいるんですか?」
軍司「僕は見たことないですけど、練習場所としては最適だと思います。あれだけ綺麗な芝はなかなかないので、近くに住んでいたら、僕は毎日通いますね(笑)」
今野「そうかぁ。今日は大雨でプレーは中止になりましたが、次回が楽しみです。最後に何か言い残したことは?」
軍司「今野さんと一緒に、ぜひゴルフ場でプレーできる日を心待ちにしています!」
今野「こちらこそ、よろしくお願いします。ありがとうございました」
軍司「ありがとうございます」
次回後編へ続く
構成:粕川哲男