ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、アカデミーの定点観測を続けている土地記者が、高円宮杯JFA第34回全日本U-15サッカー選手権大会関東大会に出場した大宮アルディージャU15の戦いぶりをレポートします。
【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
大宮U15の集大成。今季最後の全国を目指す戦い
11月5日より、高円宮杯JFA第34回全日本U-15サッカー選手権大会関東大会が行なわれた。通年のリーグ戦として開催されているU-18の高円宮杯に対し、中学生年代では冬のノックアウト方式の大会として開催されている。10チームのホーム&アウェイで行なわれる高円宮杯JFA U-15サッカーリーグ関東(通称・関東リーグ)で3位以内に入れば、そのまま出場権を得られるが、4位以下のチームは予選であるこの関東大会を勝ち抜かなければならない。関東リーグを6位で終えた大宮アルディージャU15は、全国の舞台を目指してこの大会に参戦した。
出場64チームを16チームずつの4グループに分け、ノックアウト方式で全国大会進出チームを決める。その枠は、各グループ1チームのみ。4連勝してグループの頂点に立たなければならない、狭き門だ。
大宮U15は、初戦から厳しい戦いが続いた。1回戦はクラブ・ドラゴンズ柏U-15と対戦。深い天然芝に足を取られてボールコントロールがままならず、押し込まれながらも耐え忍ぶ展開が続く。前後半80分と延長戦20分をスコアレスで終え、PK戦にまでもつれ込んだが、GK野口依吹の落ち着いた対応が相手のミスを誘い、2回戦進出を決める。
GK 野口依吹
翌日に行われた2回戦の相手は東京ヴェルディジュニアユース。一進一退の攻防が続くなか、決定機はありながらも得点が奪えず、試合はまたも延長戦に。すると延長前半3分、右サイドに流れたボランチ田中翼冴のクロスをFW野口蒼流が冷静に流し込み、待望の今大会チーム初ゴールを決める。交代枠を使い切った あとに負傷者が出て、最後は5分以上を10人でプレーすることとなったが、それでもしっかりと守り切り、次のラウンドへコマを進めた。
MF 田中翼冴
FW 野口蒼流
全国の舞台まであと二つのところまで迫り、意気込んで3回戦に臨んだ大宮U15は、FC多摩ジュニアユースを相手に序盤から攻勢に出る。しかし、徐々に相手にリズムが出始めると、セットプレーからピンチを迎える。CKを一度は跳ね返したものの、ヘディングされたボールは大きな山なりの放物線を描いてゴール隅に吸い込まれてしまった。
「僕らは後半が強いので、前半は1失点で抑えられたのは良かったかなと思っていました」とDF酒井舜哉が言うように、後半の巻き返しに期待が懸かる大宮U15は、後半開始から右MFに突破力のある大澤誠虎を投入。さらに左にはドリブルが得意なFW大関駿を入れ、サイドアタックを強化した。
DF 酒井舜哉
MF 大澤誠虎
FW 大関駿
そのなかで喫した2失点目が痛かった。
「僕の前で打たれて、そこからちょっと崩れてしまった。防げた失点だった」(酒井)
「もう少し寄せられたのかなとは思います」(平家)
FW平家璃久斗
2点のビハインドを背負った大宮U15は、左サイドの大関をトップ下に移し、左にはMF杉村晄汰を投入。攻撃の枚数を増やし反撃に出る。すると後半36分、杉村の左クロスから野口蒼流がしっかりと合わせ1点を返す。アディショナルタイムにはまたも杉村のクロスから大澤が決定的なボレーシュートを放ったが、相手GKのスーパーセーブに阻まれた。そしてタイムアップ。大宮U15の全国大会出場は叶わなかった。
MF 杉村晄汰
夏の日本クラブユースサッカー選手権(U-15)大会の関東予選でも、初戦となった2回戦でよもやの敗退。結果という面では不満の残るシーズンだった。
「何か一つ、結果として出して終わりたかった。リーグ戦も3位以内という目標が残り3試合の時点で残っていたなかで勝ち切れなかったり、今大会も東京Vジュニアユースという強敵を倒しながら“ここぞ”というときに負けてしまったり……。最後の大事なところで活躍できる選手になれるかどうかというのが、彼らの今後のサッカー人生の課題だと思います」(島田裕介監督)
島田裕介 監督
厳しい言葉を口にした指揮官だったが、それはもちろん期待の裏返しである。個々の選手としてはまだまだ成長の途中段階。現時点で不足しているところは、そのまま伸びしろである。
「いろいろな選手が試合に出たことはポジティブにとらえたいです。先発メンバーは固定されていなかったので、前半戦で活躍した選手や後半にグッと伸びてきた選手がそれぞれいて、みんなが個人として成長したと感じています」(島田監督)
大宮U18へ昇格する者、高校の部活動へ進む者と、この先は道を違えることとなるが、大宮U15で果たせなかったことは、次のチームで目指せばいい。
「このメンバーと3年間サッカーをやれて本当に楽しかった。高校サッカーに行く人もU18に行く人も、またプロの舞台で会えたらいいなと思います」(平家)
中学3年間の想いを胸に、また次のターンでの成長を期す彼らには、期待しかない。