今野さんが“タダのファン目線”でクラブ関係者らに逆取材を敢行するシリーズ企画から一転、今野さんが行きたい場所・やりたいことをただただリポートするという、迷走するコーナーとなった本連載。前回に引き続き、欧風カレー専門店『gii』の戸井田さんとカレー談議に花を咲かせました。
辛さの前に来る甘味の秘密
今野「ここは、昼のアイドルタイム(ランチとディナーの間の休憩時間)を取らないのは何でなんですか?」
戸井田「やっぱり、いつでも来ていただけるように」
今野「それが本当に助かるんですね」
戸井田「いつでも開いてると思ってもらうことが大事かと」
今野「俺、晩御飯がだいたい16時くらいなんですよ」
戸井田「普通の飲食店は……」
今野「どこもやってないですよ」
戸井田「そうですよね」
今野「ここは絶対に開いてるから、すごい助かるんです」
戸井田「ありがとうございます」
今野「いいよなぁ。トッピングとかはここで調理しているわけですか」
戸井田「そうですね」
今野「カレーは辛口派ですか?」
戸井田「真ん中がいいですね。辛いのもいけるんですけど、やっぱり味わうためには」
今野「中辛ですか」
戸井田「まかないで食べるのは、最近お腹が出てきたからおさえてるんですけど(笑)、中辛ばっかりですね」
今野「ほほぅ」
戸井田「それが一番美味しく食べられると思っています」
今野「なるほど」
戸井田「辛いの好きですけどね」
今野「でも、辛すぎて味がわからないときがありますよね」
戸井田「だから、やっぱり中辛だと思います」
今野「俺はどうしても辛口にしてしまうんです。でも、ここは辛口だろうが、最初に甘いじゃないですか」
戸井田「そうですね。甘さのあとに辛さが来る、二段階になっています」
今野「それですよね」
戸井田「はい」
今野「そこはどうやってるんですか?」
戸井田「甘味はフルーツで取っています。マンゴーとか桃とか梨とか。その季節によって、いろいろ変えています」
今野「そうなんだ! じゃ、季節によって味が違うんですか?」
戸井田「多少ですね」
今野「へ~、じゃあ、あれなのかな。舌っていうのは最初に甘さを感じるんですかね?」
戸井田「う~ん、そういうシステムになってるんじゃないですかね(笑)」
今野「辛さって、痛さらしいですからね」
戸井田「へ~」
今野「かき氷で頭がキーンとなるじゃないですか」
戸井田「はいはい」
今野「あれは脳がバグってるらしいんですよ。冷たさを痛さと感じてしまうとか」
戸井田「へ~」
今野「なので、冷たいと念じながら食べると、頭痛くならないらしいです」
戸井田「ホントですか!?」
今野「本当です。脳に言い聞かせながら食べるといいらしいです。そう考えるとカレーはどう念じて食べればいいんだ?」
戸井田「……」
今野「舌が痛くなるのも……でも、あれは本当に痛いか」
戸井田「そうですね。しびれる感じもありますね」
今野「ここは、中辛もそこそこ辛いですよね」
戸井田「そうですね。うちの中辛は、ご家庭での辛口くらいになっています」
今野「あぁ、やっぱり。じゃ、辛口は結構辛いほうなんですね」
戸井田「そこまで大袈裟に辛いってわけじゃないですけど、中辛よりは」
今野「ここの辛口を食べたときに出てくる汗、あれが気持ちいいですよね」
戸井田「はい(笑)」
今野「お客さんは、中辛を頼む方が多いですか?」
戸井田「そうですね。中辛が一番出ます」
今野「お子さんは?」
戸井田「お子さまの場合、甘口の下に甘甘口っていうのを用意しているので」
今野「へ~。そういうのもあるんだ」
戸井田「お子さま向けですね」
今野「本当に美味しい店だし、ご近所さんはたぶんみんな知ってるじゃないですか」
戸井田「はい」
大友さん来たことない問題
今野「それが(小声で)……先月取材した大友さん、ここの裏くらいに住んでて、そこの公園で遊ぶくらいで、『あそこは裏口からも入れますよね』なんてことも知っているのに、お店に来たことないって言うんですよ」
戸井田「あっ、そうなんですか(笑)」
今野「ひどいと思いませんか?」
戸井田「……」
今野「あのときも、今日のような取材を30分くらいはやりましたかね。なぜ行かないって話で終わりそうになりましたよ(笑)」
戸井田「あははは……」
今野「しかも、一番好きな食べ物はカレーだって言うんですよっ」
戸井田「はい」
今野「それで来てないんだから。ラーメン屋は一度行ったって言ってたかな……。ホント、納得がいかないですよ(笑)。そう言われても困るでしょうけど」
戸井田「近所の方は、いつもここの道を通るとき、土日とかは結構混んでいるので……」
今野「人気のお店だってことも知ってましたよ」
戸井田「いつも混んでるからって、少し敬遠する方もいるかもしれないですね」
今野「そういうことか」
戸井田「たまたますいてたから入ったら美味しかった、と言われることもあります」
今野「機会があったら伝えておきますよ」
戸井田「ありがとうございます」
今野「ずっとやってるからって」
多彩過ぎるオーナー
戸井田「一歩の勇気ですよね。入ってみる」
今野「あははは……。内装もお洒落だし、入りづらいってことはない。お洒落すぎて入りづらいって人もいるのかな。これもオーナーさんの趣味ですか?」
戸井田「そうですね。オーナーが改装して、全部イチから。デザインのほうも強いので」
今野「へ~。そうだ、さっき紙ナプキンがオーナーの顔じゃないかって話を」
戸井田「自分もそうだと思うんですけど、架空の人物って言ってましたね」
今野「そう、これこれ」
戸井田「それもオーナーがデザインしたんです」
今野「そうなんですかっ。何者なんですか?」
戸井田「いろいろやっていますね。デザイン系の仕事とか、メーカーのバッグのデザインを担当したという話を聞いたこともあります」
今野「多才なんですね」
戸井田「20年少し前、自分が田舎から出てきたときはラーメン屋の2階に住まいがあって、そこに住まわせてもらってたんです。そこはオーナーがたまに使っていた部屋みたいで、油絵とかありましたからね」
今野「へ~」
戸井田「だから、自分で図面を描いたりもできるんですよね」
今野「すごい人ですね」
戸井田「味を作り上げるすごさはありますよね。カレーにしても、ラーメンにしても」
今野「何やってもうまくいく人なのかな」
戸井田「もちろん、努力もすごいと思います」
店名の由来でまさかの展開
今野「ところで店名になっている『ギー』って何ですか?」
戸井田「ヤギのミルクの油ですね。牛のミルクの油がバターじゃないですか」
今野「へ~、ヤギのミルクから作ったバターを『ギー』って言うんですか」
戸井田「そうです」
今野「それを使ってるんですか?」
戸井田「使ってないです」
一同「(爆笑)」
今野「即答!」
戸井田「響きがいいからつけたらしいです。僕も最初そこが疑問で聞いたんですけどね」
今野「あははは……。確かに『バター』よりは『ギー』のほうがいいですね」
戸井田「そう思います」
今野「ここ、お休みは?」
戸井田「年末年始の3日間だけで、あとはずっとやってます」
今野「え!?月曜から日曜まで?」
戸井田「はい。以前は月曜日を定休日にしていたんですけど」
今野「すごっ!」
戸井田「やっぱり、お客さんにとっていつでもやってるというのが大事なので」
今野「何時から何時ですか?」
戸井田「オープンが11時15分、夜は21時30分までです」
今野「チェーン店とかよりもやってる感じですね。すごいな。お休みあるんですか?」
戸井田「ありますあります」
普通は、なりゆかない……
今野「戸井田さん、ご家族は?」
戸井田「犬が4匹います。トイプードルが。母親と4匹の犬が家族です」
今野「名前は?」
戸井田「(笑)。名前ですかぁ?」
今野「はい。名前は自分でつけたんですか?」
戸井田「いや、なりゆきで」
今野「なりゆき?」
戸井田「お母さんがテンテン、お父さんがタロウ、その子どもがピカチュウとキュウキュウ」
今野「どういうこと?」
戸井田「なりゆきで決まりました。自然と」
今野「キュウキュウは、そんな感じで泣いてたとか?」
戸井田「それはありますね」
今野「それは納得いきますけど、ピカチュウは?」
戸井田「いつの間にか、自然と」
今野「自然とピカチュウになるのは、ピカチュウ以外いないんですよ」
戸井田「不思議ですね(笑)」
今野「もじるとかじゃなく、そのままピカチュウなんですね」
戸井田「はい」
今野「最後におもしろい話が聞けてよかったです。ありがとうございました」
戸井田「こちらこそ、ありがとうございます。大丈夫ですか、こんな感じで」
今野「はい。いつもどおりです。今日はごちそうさまでした」
戸井田「はい。またぜひ来てください」
構成:粕川 哲男
協力:欧風カレーgii
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