【聞きたい放題】和田拓也&オリオラサンデー

選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、7月から新たにチームに加わった和田拓也 選手とオリオラ・サンデー 選手に話を聞きました。

聞き手=粕川 哲男


7年ぶりの復帰となった和田拓也

試合開始から終了までピッチを駆け、ボランチでもサイドバックでも献身的にチームを支え続ける和田拓也が帰ってきた。7年ぶりの大宮復帰だ。最初の加入は2013年8月。ズデンコ・ベルデニック監督の交代と同時に大宮の一員となり、5シーズンを過ごした。その間にJ2降格、J2優勝、J1で5位となった翌年に2度目のJ2降格と、喜びも悔しさも味わった。その後はサンフレッチェ広島、横浜F・マリノス、横浜FCでも確かな足跡を残し、再びオレンジのユニフォームに袖を通す決断を下したポリバレントプレーヤーは、J3の頂点へ向けて走るチームの力となってくれるはずだ。

――おかえりなさい。
「ありがとうございます()

――今日(取材日/7月17日)がチーム合流2日目ですか?
「そうです」 

――どうですか、ひさしぶりの大宮は。
「なんて言うんですかね、ひさしぶりに戻ってきたなっていう、懐かしい感じがします」

――つながりがある選手は?
「同級生のトミ(富山貴光)(濱田)水輝……あとは(泉澤)仁、(杉本)健勇、(小島)幹敏くらいですかね。前回大宮で一緒にやっていたのは、トミ、仁、幹敏の3人ですね。水輝は同い年なんで、ずっと昔から知ってるんですよ。むしろ水輝が一番(付き合いが)長い感じなので、いろいろ教えてもらってるところです。健勇とは(東京)ヴェルディ、(横浜F)マリノスでもやっているので、今回が3回目です」

――今回の移籍にあたって誰かに相談したり、報告したりは?
「いや、俺、誰にも言わないで決めて。健勇に報告しようと思ったら、向こうから連絡が来ました。誰かから聞きつけたんでしょう」 

――どんなやり取りをされたんですか?
「『来るん?』って言われたから『行くよ』って。『じゃ火曜日ね』ってだけ()。熱いやり取りはしてないですよ。俺と健勇に、そういうのはないです」

――初めて戦うことになるJ3リーグに、どのようなイメージがありますか?
「いや、別にそんなに変わらないと言うか。試合をしたって天皇杯なんかどっちが勝つか分からないし、J3はこうだよねってのは思ってなかったし、ないと思います」

――以前に大宮で過ごした5シーズンで特に覚えていることは?
「う~ん、印象で言ったらJ2で優勝して、J1昇格を決めた(2015)シーズンが、チームとして一番まとまっていて、『あぁ、いいチームだったな』って感じがあります」

――どのあたりに良さが?
「チームワークですね。チームワークって言うと、ちょっとありきたりすぎて面白くないですけど、みんな大人で、思いやりがあって。だからぬるいとかでもなくて。やっぱり、人間性がピッチに出るんですよ。隣の選手を気遣えるかとか、そういう一つひとつが出ると思っているので、あの年は、みんなの良さがピッチに出たシーズンだったと思います。みんないい人でした」

――人間関係がうまくいっていたんですね。
「選手みんな仲が良かったし、(年齢が)上の人も優しかった。当時は下から数えた方が早かったと思いますけど、俺のことも対等に見てくれたって言うか。もちろん目上の人をリスペクトしてましたけど、普通に『もっとこうしたいんだよね』って話はしてました」

――今回は、そのあたりの経験も伝えながらという感じですか?
「そういうこともしたいと思っているんですけど、本当にこのチームは、そういうことが要らないくらい(長澤)徹さんが細かく見てるし、言うし、それに選手が応えているので、いいチームだなと感じているところです」

――あらためて、2度目の移籍を決めた要因は?
「予想していなかったので、オファーをもらったときビックリしたんですけど、強化部と話をして決めました。自分としても思い入れはあったし、(J2)落として移籍したっていうのは……ちょっと心に引っ掛かっていたので。いいタイミングでオファーをもらえたと思いました。あのときの借りを返すなんて、たいそうなことはできないですけど、また大宮の力になれたらと思って決めました」 

――2017年、2度目のJ2降格を最後に広島に移籍した心残りがあったんですね。
「チームを出た選択に関して、そこまで引っ掛かる部分はなかったですが、移籍するなら残留を決めて移籍したかった。だから、何か気持ち悪いっていうか、モヤモヤした感じ、もう少し何かできたんじゃないかって思いはありました」

――横浜FCは24試合を終えてJ2で3位。J1昇格の可能性があり、和田選手もしっかり試合に出ている状況でしたが、それでも大宮移籍を決めたわけですね。
「試合に絡ませてもらっていて、横浜FCもすごくいいチームでしたけど、自分の環境を変えるにはいいタイミングでしたし、あと何年サッカー選手でいられるか分からない中、挑戦するのは気持ち的にも大事かなって。ずっと同じところにいると慣れちゃうところがあるので、こうやって環境を変えるのはいいなっていう思いがありました」

――広島、横浜、横浜FCとチームが変わる中、大宮の状況は気にされていましたか?
「そうですね。知っている選手もずっといたし、機会があれば。そう言えば、1回試合を観に来たんですよね。NACK(5スタジアム大宮)まで、いつだったか忘れましたけど」

――今回は年齢的には上から2番目になります。そんな中、どのようなことを求められて、どんな役割を果たしたいと考えていますか?
「やっぱり、歳くったからにはって部分は、言われなくても求められていると思います。ただ、これだけいい空気の中、監督とコーチと選手たちが練習の雰囲気作りからしっかりやっているので、本当にこの2日目は練習についていくのに必死で、自分に何ができるかどころではなかったんで」

――練習が充実しているということですね。
「この空気感は、すごくいいなと思うし。『これは強くなるチームだな』と感じています。だから、俺もまだ強くなれると思って、みんなに引っ張ってもらいます()

――どんなプレーを見せたいと思っていますか?
「いや、俺がどうこうっていうより、このチームの一選手として、チームから求められていることをやるだけって感じですね。俺がこうしたい、ああしたいというのではなくて、このチームの選手として、求められることをやらなきゃって感じです」

――ボランチでもSBでも、やるべきことは変わらない。
「そうですね。ポジションがどうなるかまだ全然分からないし、別にどこでもいいです。キーパーはちょっとムリかな()

――チームの目標はJ3優勝ですが、個人的に思うところは?
「いや、J3優勝以外はないですね。チームが(J2)上がることがすべてだし、もちろん優勝したい思いはあって、2位でいいとなんて思わないけど、何が何でも上がるって姿勢と心意気は必要だと思っています」

――J3優勝を達成したら、個人的に3カテゴリーで頂点に立ったことになるんですよね。
「ん? あぁ……そうか。そうですね。あんま考えてなかったですけど、言われてみれば。森脇(良太・愛媛FC)くんは天皇杯、ルヴァンカップ、ACLも獲ってるから別格として、意外と少ないのかもしれないですね。バンさん(播戸竜二)も、J1では優勝してないって言ってたしな。優勝したら(3カテゴリーを制したと)言っていきますよ()」 

――その一方で降格の悔しさも味わっているので、そうした経験が若い選手たちを刺激し、チームの厚みになると思います。
「そうなんですよ。3回降格して、2回しか昇格していないので、収支がマイナスなんで。とりあえずトントンまでは持っていきたいと思ってます」 

――J3優勝、J2昇格、その先も考えたりしていますか?
「もちろん。自分が続けるからには常に上を目指しますし、J2でいいなんて、ちょっとも思わないんで。ただ、それは自分一人でできることではないんで、チームフロントと監督、コーチ、選手みんなで目指すものなので、そこに少しでも貢献できたらいいなと思います」

関西弁を使いこなすオリオラ サンデー

ナイジェリア生まれの21歳はスピードが持ち味のストライカーだ。2019年、京都府の福知山成美高の国際コースに留学生として入学し、日本の部活動で3年間汗を流した。2022年の卒業と同時に加入した徳島ヴォルティスでは、スペイン人監督の下で思うように出場機会を伸ばせなかったものの、昨年8月にヴァンラーレ八戸に期限付き移籍すると、石﨑信弘監督の下で、その才能を開花させた。今季の開幕戦、NACK5スタジアム大宮で決めた一発――縦パスに抜け出し、笠原昂史もかわして押し込んだゴール――は、大宮のファン・サポーターの脳裏にも深く刻まれているはずだ。

――どのような思いで移籍を決めたのですか?
「大宮はすごくいいチームやから、自分自身、もっと成長できると思ったんです。大宮は前から好きなチームの一つだったので、オファーが来たときはすごくうれしかったです」

――オファーが来たのは?
「最初は去年の12月くらいにも少し話があったんですが、そのときは、まだ契約が残っていたので八戸で続けることにしました。だけど、たくさん試合に出て、活躍して、自分のレベルを上げれば、もう1回オファーが来るかもしれないと思ってがんばりました。今回、もう1回オファーをもらえたときは、めっちゃうれしかったです()

――大宮と八戸が対戦した今季の開幕戦ではゴールも決めていますが、大宮のどのようなところに魅力を感じていたのですか?
「あの試合は先発で試合に出ていて、0-2から1点を返しました。でも、大宮はめっちゃ強かった。1点取ったので自分の良さを見せることはできたとは思いますが、大宮相手にもっといいプレーを見せて、逆転勝ちできたら、より高いレベルに行けるとも感じました。結局、何もできず1-4で負けたので、大宮はホント強かった」

――そんなチームの一員になりました。
「大宮にはいい選手がたくさんいるので、自分ができることも増えるし、プレーするのが簡単になると思います。例えば、いいスルーパスがたくさんくるかもしれへんから、このチームでなら、開幕戦で決めたようなゴールをたくさん見せられると思います」

――関西弁なんですね。
「……俺が話すとみんな『関西弁』って言うけど、関西弁とか分かんない()。最初に京都で日本語を覚えたから『なんでやねん』とか普通に使うし。でも、俺がしゃべると、みんなめっちゃ笑ってる。こいつオモロイナって感じなのかも」

――練習後にずっと話をしていて、ツーショットの写真も撮られていましたが、若林学歩選手と仲がいいんですね。
「大宮来る前に友達になって、ちょっと話してたんです。インスタグラムのDMで連絡を取り合ってたら移籍が決まったので、最近できた友だちに会えるってビックリした。学歩はガーナ、俺はナイジェリアで、髪の毛もすごいから、すぐに仲良くなった」 

――年齢も同じくらいですよね。
「俺(2003年の)418日やから。アイツの誕生日(2004310)は分かんない。だけど、すごくいい友達。学歩はほぼ日本人。アフリカのこと全然分からん()。俺が教えてやります」

――大宮の練習の雰囲気はどうですか?
「すごく楽しい。みんなコミュニケーションを取ってくれるし、できないメニューとかも教えてくれるので、楽しく練習しています。練習のムードは……フリー! あと、練習のレベルが高いので、やってて楽しいし、ミスが少ない。家に帰って思うんです。『大宮でこの練習をしてたら、絶対に成長できる』って」

――来日6年目、日本での生活はどうですか?
「すばらしい。めっちゃいい。他の国に行ったことないけど、友だちに話を聞いて比べると、日本の良さが分かる。夏は暑いけど、アフリカはもっと暑い」

――日本で車の免許も取って運転しているんですね。
「今は運転もうまくなったけど、最初は大変だった。日本の道は、狭くて怖い。試験もめっちゃ落ちたし()8回落ちました。でも、諦めなかった」

――背番号90には、どんな思いがあるんですか?
「高校から日本に来たんですけど、(福知山成美高の)1年生のときに初めてもらったのが90番だった。あと、俺の友だちが『90番はラッキーナンバー』と言ってたので、この先もずっと90番を続けると思います」

――八戸時代に石﨑監督、髙橋勇菊コーチから指導を受けて大きく成長したと思います。監督、コーチに言われたことで印象に残っていることはありますか?
「石さん、勇菊さん、スタッフ全員が、俺がより高いレベルに行くための練習をしたり、アドバイスをくれたりしました。『大宮は強くて大きなチームだから、もっとがんばれ』と送り出してくれましたし、『大宮に行っても自分のことを信じて、怖がらず、必ずできると思って練習すれば、もっと上に行ける』とも言ってくれました」

――八戸に移籍した昨季にJリーグ初得点を決め、今季は20試合を終えた時点で19試合出場2得点。自分ではどこが伸びての結果だと思いますか?
「俺、徳島のときFWはあまりやってなかった。八戸に行って、石さんにいろいろ教えてもらったんです。(相手の)背後の取り方とか、それまでは全然知らんかった。そこを、石さんが教えてくれた。あとは、シュートとかもたくさん練習したので、前よりも決まるようになった。そのあたりが一番成長したと思います」

――八戸のホームページに掲載されていたコメントが感動的でした。
「みんな本当に優しかった。だから、いつまでも忘れないと思う。寂しさはあるけれど、サッカーの世界はずっと同じじゃダメで、チャレンジせなアカン。たぶん八戸のファン・サポーターも分かってくれてると思うから、俺はみんなの思いも背負って、もっともっと上のレベルまで行かないといけない」

――大宮では、自分のどんな良さを見せたいですか?
「やっぱり、うまい選手がいっぱいいるので、これまで自分が勉強してきたことのすべて、全部を出したいと思います。もっともっと成長して、スピードで相手選手の背後を取って、いっぱい点取って、ファン・サポーターのみんなが喜んでいる顔を見たい。だけど、俺はFWやから点を取らなアカン。どうやって点を決めるか。そこを一番に考えてます」

――ゴールパフォーマンスは宙返りですよね。
「はい。ぜひ、大宮のファン・サポーターみんなの前で見せたいです。2点取ったら2回、3点取ったら3回、4点取ったら4回やります()。サッカーのゴールと関係なかったら、たぶん10回、12回はできると思います」

――それはすごい。
「ナイジェリアでは小さいころから遊びでやってるんです。小学校のときもみんなやってた。俺も練習しとったもん。誰かに教えてもらったんじゃなくて、友だちがやってるのを見て、真似してチャレンジしてるうちにできるようになりました」

――ファン・サポーターの皆さんに、なんて呼ばれたいですか?
「まぁ、サンちゃんとか、オリちゃんとか。どっちでもいいです()

――今季の開幕戦だけでなく、徳島時代も大宮のスタジアムで試合をしたと思いますが、大宮のファン・サポーターの印象はありますか?
「徳島のとき(2022319日・第5)はコロナやったから、(制限付きだったので)そこまでいっぱいお客さんが入ってなかったけど、今季の開幕戦はすごい数のお客さんで、雰囲気もよく最高でした」

――大宮での目標を教えてください。
「チームとしてはJ3優勝、J2昇格を決めて、個人としては5点取りたいです」


粕川哲男(かすかわ てつお)
1995年に週刊サッカーダイジェスト編集部でアルバイトを始め、2002年まで日本代表などを担当。2002年秋にフリーランスとなり、スポーツ中心のライター兼エディターをしつつ書籍の構成なども務める。2005年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。

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