今野浩喜の「タダのファン目線記」

今野さんが「ただのファン目線」で行きたい場所に行ったり、会いたい人に会う本連載。2024年最後の回は、今野さんにリーグ優勝で幕を閉じた2024シーズンをまったりと振り返ってもらいました。


なんだかんだ勝利は気持ちいい

――2024シーズンの大宮アルディージャを振り返ると、どんな思いがありますか?
今野「う~ん……自分のことじゃないけど、すごく下に落ちた感じがしたんですね。言葉を選ばずに言えば、なんでこんなチームを応援してなきゃいけないんだって(笑)。年間シートを買う人とか、どこまで好きなんだろうって」

――さすがに言葉を選ばないと……。
今野「ただ、過去イチ試合を見てたかもしれないですね。やっぱり、勝つって単純にいい。カテゴリーは関係ない。すごく楽しかった。落ちたシーズンの真逆の展開が多かったじゃないですか。前の年は勝っててもアディショナルタイムにやられる感じがあって、実際にそうなっていきましたけど、今シーズンは追いつく、ないしは逆転できる感じがしたので、本当におもしろかったですね」

――現地観戦されたのは?
今野「このコーナーで行った2回ですかね。(第9節)アウェイのYS横浜戦と、優勝を決めた(第33節)今治戦。優勝の瞬間を見られてよかったです」

――最終成績は25勝10分3敗。72得点はリーグ最多、32失点はFC大阪の次に少ない。2位の今治に勝点12差をつけての優勝でした。
今野「来シーズンどうなるんだろうって思いはありますね。ルヴァンカップではカテゴリーが上の名古屋にしっかり負けたじゃないですか。J3で明らかに強かったからといって、まったく油断はできない。J3の1位は、Jリーグの41位ですからね」

――確かに。
今野「そこをちゃんと考えないと、まずいですよね。調子にノリそうで。ま、俺の立場は調子にノッてもいいんですけどね(笑)」

――長澤徹監督の契約更新に続いて、選手たちの契約も明らかになってきました。
今野「他のチームが続々と発表する中、何も出ないからどうなんだろうって思ってたけど。富山から獲得した安光将作選手といい、(オリオラ)サンデー選手といい、大宮から点を取った選手を獲るっていうのが気持ちいいですね。『ジャンプ』みたい」

――仲間が増えていく感じですね(笑)。
今野「開幕戦は八戸相手に4点か。今シーズンは複数得点が多かったような気がしますね。これは前も書いたと思うけど、結果点を取ってるけど見てるときは危ないシーンだらけ。ずっと攻められてる感じなんだけど、最終的に3点くらい取ってる。それにしても(Jリーグアウォーズの)MVP、なんで笠原(昂史)選手じゃねぇんだって思いますね」

――はい。
今野「普通、最低でも優勝チームからじゃないですか。今治は優勝してないわけだから、得点王だけでいいじゃないですか。どうしてMVPまでいっちゃうんだろう。あそこまでやって獲れないんだから、キーパーがMVP獲るのはムリそう」

11分のために長野までいくサポーターに感心

――第35節、ガイナーレ鳥取を相手に5-4なんて試合もありました。
今野「あぁ!なんであんなことになったんだろう。う~ん、J2昇格を決めるのが最大のミッションだったと思うんですね。俺の個人的な意見では、優勝するかどうかはどうでもよかった。だから、最後のほうは消化試合というか……。ま、J3優勝で喜んでるから水を差してるだけですけどね(笑)」

――特に印象に残っている試合はありますか?
今野「毎年1試合ごとにメモってたんですけど、今年は何にもしてないから……全然思い出せないんだよな。(試合結果を見ながら)初めて負けたのが松本戦ね。試合が中断したのはアウェイの長野戦でしたっけ? 残りの11分間を、わざわざやりに行ったのか。そこに行くファン・サポーターも、とんでもないですよね。あの再開試合は印象に残ってますね。結果、引分っていう」


――勝ちそうでしたけどね。
今野「ケガのリスクもあったわけですよね。どんなテンションで、どんな展開になるのか、まったく予想できませんでした。あの試合はすごかったな」

――今シーズンは勝利数も得点も多かったので、記憶が薄まりますね。
今野「そのときそのときで盛り上がりがあったんでしょうけど、結果を知った状態でこうやって振り返ると、勝つのは当然だよねって感じがありますよね。3-2で勝った(第18節)琉球戦。これも俺、DAZN観ながら文句言ってたな。これ(PKになった村上陽介選手のプレー)でハンド取られるなら、ディフェンスはどうやって守ればいいんだって」

――アディショナルタイムのPKで追いつかれて、最後に杉本健勇選手が突き放すという劇的な展開でした。
今野「う~ん……これ(琉球の)キーパー悔しいだろうな。はじく場所が悪すぎた。確かに、最終的に勝ち切ったこの琉球戦は、今シーズンを象徴するような試合でしたね」


――はい。
今野「今シーズンは試合に勝った負けたの楽しさもあったけど、何よりレッドブル案件ですよね。頭の中は、そっちの比重が大きかった気がするな。エンブレムの変更とか。嫌がってる人もいるから、こんなこと言ったらすごく怒られそうだけど、慣れると思いますよ。俺自身は正直、ここまでレッドブルが歩み寄ってくれるとは思わなかったし。どうなるか不安だったから調べたけど、他のクラブはものすごい変わり方なのに、大宮にはだいぶ寄せてくれた。他の国の人のほうが、反対するときに強い反応がありそうですけどね。たぶん、本当に今のクラブ、チームがいいと思ったんでしょうね」

――そう思います。
今野「ヴィッセル神戸の変わりようのほうがすごいですからね。チームカラーも変わって、エンブレムだけに白と黒の縦縞が残った感じかな。あのへんがクラブの歴史として、親が子どもに得意げに言える楽しいところかも。『昔は縦縞だったんだよ』って(笑)。大宮も、いずれそうなるんだろうな、たぶん」

――そういう楽しみ方もできますね。
今野「あとは、やっぱりクロップですよね。どういう関わり方をするのか。来年の1月に視察に来るって話がありますけど、どうなんでしょう」

――クロップ直撃取材企画、提案してみますか?
今野「……なんて言うんだろうな。これまで俺が話を聞いてきたのは日本人じゃないですか。これは驕りかもしれないけど、俺を知ってるって気持ちもあってしゃべってきましたけど、クロップ絶対俺のこと知らないじゃないですか(笑)。ドキドキしますよね。その場合、向こうは一記者からとして質問を受けると思うので、気分を害さないといいけど……。最初に言えばいいのか。『I am famous talent』とか」

――いいですね。
今野「世界中にあるチームと、どう関わるんですかね。戦術の統一とか選手の移籍とか、今後の展開が楽しみですね。ゲーゲンプレス、大宮で見たいなぁ」

全ゴール集を観ながら2024年を振り返る

――今シーズンの、今野さん的MVPは?
今野「MVPはもう笠原選手ですね。絶対。単純にビッグセーブが多かったですよね。前に大宮にいたときよりも頼れる存在になった感じがします。あとは、パントキックもこんなうまかったっけと驚きました。最近のトレンドなのか、低い弾道のキックもすごかった。失礼ながらキックがうまい印象はなかったので、いつ覚えたんだろうって」

――特に覚えているゴールは?
今野「大宮の全ゴール集がアップされてましたよね。全部で72得点。22分もあるのか。(全ゴール集の動画を観ながら)泉選手のゴールが1点目ね。(第2節、FC岐阜戦の下口選手のゴールに)おぉぉ、すごい。藤井選手もよかったですよね。なんか、どれもいいゴールですね。(第11節の今治戦で)シュヴィルツォクが2得点。これは誰だ?」


――第12節、3-0で勝った鳥取戦の藤井選手ですね。
今野「今のはベストゴール候補だな。カウンターで抜け出して、最後にディフェンスをコケさせてる。最後の1対1がうまいですよね。藤井選手のことが好きってのもありますけど。仕上げは右足か。うまいなぁ。3人相手にして決めきってる」


――確かに。
今野「おぉ、いい!ミドルシュートも多かった。これが3-2で勝った琉球戦か。最後の杉本選手、落ち着いてますね。サンデー選手、日本語めちゃくちゃうまいですよね(笑)。長澤監督、ファビアン・ゴンザレス選手とサンデー選手を並べませんでしたね。これかぁ、これ(第28節、ギラヴァンツ北九州戦での関口選手のゴール)いいですね。関口選手の契約更新はうれしかったですね。来シーズンも、すごく楽しみです。和田選手もどっかで点取ってましたよね」


――第30節のSC相模原戦と、第34節のいわてグルージャ盛岡戦の2得点ですね。
今野「このループシュートもいいな。和田選手って、たしか前に大宮にいたときに初得点を決めたような気がするんです。そんな記憶があるんですけど……」


――本当(2015年7月8日、J2リーグ第22節コンサドーレ札幌戦でJリーグ初得点)だ。すごい記憶力ですね。
今野「意味の分からない記憶力なんですけどね(笑)。そこそこキャリアを積んで大宮に来たのに、初ゴールだったんだって驚いたのを覚えてました。そんな選手が、あんな落ち着いた、狙いすましたシュートを打つんだと思うと感慨深いです。なので順位をつけると、3位が相模原戦の和田選手、2位が北九州戦の関口選手、1位が鳥取戦の藤井選手」

――決まりましたね。
今野「関口選手のゴールは、倒されながらも周りを見て、冷静にパスをつないだファビアン・ゴンザレス選手、ファウルを取らずにプレーを流した審判の判断もよかった」

――ありがとうございました。来シーズンもよろしくお願いします。
今野「よろしくお願いします」

構成:粕川 哲男

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