【ライターコラム「春夏秋橙」】新加入選手紹介 第1回

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回から3回にわたり、2025シーズンからアルディージャに加わった新加入選手を紹介します。

【ライターコラム「春夏秋橙」】粕川 哲男
新加入選手紹介 第1回


FW 10 豊川 雄太

経験と創造性を兼ね備えたアタッカー

攻守において進んでボールに絡み、タイムアップまでハードワークを怠らず、卓越したフィニッシュ精度で歓喜を呼び込むアタッカーだ。

洗練されたテクニック、一瞬の閃き、創造性に満ちたプレーと思い切りの良さも魅力で、ゴールパターンは多彩そのもの。そうした特長はプロキャリアを始めた鹿島アントラーズ、才能を開花させたファジアーノ岡山、韓国に競り勝ってアジアの頂点に立った2016年の U-23日本代表、3シーズンを過ごしたベルギーのKASオイペンでも披露されてきた。

2020年にJリーグに復帰すると、セレッソ大阪、京都サンガF.C.でも攻撃の中心となり、2020年と2023年には、ともに「圧巻」と絶賛されたJ1月間最優秀ゴールも決めている。

長澤徹監督、若宮直道コーチとは岡山、京都に続いて3度目、戸田光洋コーチとは岡山以来2度目の共闘となる。今回の移籍にあたり長澤監督らと「特に話はしていません」と言うが、それはあらためて言葉を交わす必要のない堅い絆があるからだろう。新天地に大宮を選んだ理由は「信頼している徹さん、若さん、光さんがいたから」と明確だ。

「攻守でアグレッシブに、エネルギーを出してゴールを決めること、ゴールに迫ることが自分の特長なので、そこは出していかないといけないと思っています。1位を狙うことがチームの、そして僕の目標でもあるので、そのために自分にできること、求められていることを、目に見える結果として出していきたい」

経験豊富な30歳。目指す場所、自身の役割は、はっきりと自覚している。

Profile
1994年9月9日生まれ、熊本県出身。171cm/64kg。
大津高→鹿島アントラーズ→ファジアーノ岡山→鹿島アントラーズ→ファジアーノ岡山→鹿島アントラーズ→KASオイペン(ベルギー) →セレッソ大阪→京都サンガF.C.を経て、今季より大宮に加入。

DF 16 安光 将作

最大の武器が“得点力”のサイドバック

昨シーズンのJ3リーグ最終節、大宮アルディージャの無敗記録を17試合で止めた男が、新たに仲間に加わった。するするとゴール前に侵入して先制点を押し込み、強烈なミドルシュートで2点目をお膳立てした、カターレ富山のあの左サイドバックだ。

大宮でもDF登録だが、最大の特長は優れた攻撃力にある。プロ3年目の昨シーズンは36試合出場8得点6アシスト。守備の選手としては抜群の数字を残している。サッカーを始めたころは前線でプレーし、法政大時代にサイドハーフで評価を高め、一昨季に富山でサイドバックにコンバートされた。ポジションに対するこだわりはない。

「運動量とか、後ろから攻撃に参加するプレーが武器だと思うので、そこを発揮したい。どのポジションで、どんな役割を与えられるのか分かりませんが、富山でサイドバックにチャレンジしていなかったら、今の自分の立ち位置はない。大宮で任されるポジションが初めてだったとしても、前向きに 取り組んでいけたらと思います」

3シーズンを過ごした富山を離れ、プロ入り後で初となる移籍を決断した。「知っている選手はアルトゥール(シルバ)だけなので、ゼロから人間関係を作るのは難しいですね」と人見知りの一面ものぞかせるが、新たな挑戦に迷いはない。

「ここで結果を出して自分の価値を上げられたら可能性が広がる。(大宮は)他の日本のクラブより世界に近いと思うので、まだ道筋が見えるレベルじゃないですけど、海外挑戦という大きな目標というか……夢に近づくために、大宮で勝負する覚悟があります」

Profile
1999年11月2日生まれ、アメリカ出身。179cm/74kg。
ジェフユナイテッド市原・千葉U-15→ジェフユナイテッド市原・千葉U-18→法政大→カターレ富山を経て、今季より大宮に加入。

GK 45 坪井 湧也

正GK争いに名乗り。神戸から来たGK

J1リーグ連覇を成し遂げたヴィッセル神戸から期限付き移籍で加わった25歳のGKだ。昨シーズンは、同じく期限付き移籍先のジュビロ磐田でJ1リーグ2試合に出場するなど、少しずつ成長の階段を上っている。実戦経験で先を行く3人の先輩――笠原昂史、志村滉、加藤有輝――とポジションを争うことになるが、4番手に終わるつもりはない。

「キーパーチーム全員で最高の雰囲気を作れているので、とてもいい環境だと思います。でき上がっているグループに入っていく難しさは感じていません。僕も新しい風を吹かすというか、刺激を与えて、キーパーチームのレベルをより上げていけたらと思います」

プロ2年目の神戸でJ1優勝を経験した。チームの一員となってまだ日は浅いが、大宮アルディージャにも、あのころに似た“ハイレベルな日常”があると実感している。

「J1で優勝したときの神戸は、練習中の要求や、一つひとつのプレーに対するこだわりが、とてつもなく高かった。日常がすべてという意識、求め合うところの高さは大宮も同じ。似た雰囲気を感じるので、いいシーズンを送れそうだなという期待があります」

誇れる武器は「1対1のシュートストップとフィード。足元の技術にも自信があります」。尊敬する先輩たちから学び、切磋琢磨し、チームと自身が掲げる高い目標へと向かう。

「スタメンを勝ち取って、試合に出てJ2優勝に貢献する。それと同時に、この1年間で実力をつけて、選手としての価値を高める。今回そういう強い気持ちで移籍を決めたので、その思いをぶらすことなく、一生懸命やり続けます」

Profile
1999年8月23日生まれ、兵庫県出身。183cm/73kg 。
ヴィリッキーニ自由東SC→自由が丘中→ヴィッセル神戸U-18→中央大→ヴィッセル神戸→ジュビロ磐田を経て、今季より大宮に加入。


粕川哲男(かすかわ てつお)
1995年に週刊サッカーダイジェスト編集部でアルバイトを始め、2002年まで日本代表などを担当。2002年秋にフリーランスとなり、スポーツ中心のライター兼エディターをしつつ書籍の構成なども務める。2005年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。

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