【聞きたい放題】ガブリエウ「自分たちを信じて、信じ切ってやり続ければ、難しい状況も絶対に克服できる」

選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、横浜FCから加入した新キャプテンのガブリエウ選手に話を聞きました。

聞き手=戸塚 啓

「自分たちを信じて、信じ切ってやり続ければ、難しい状況も絶対に克服できる」


ここまでのチームの印象は?

――チームの始動から1カ月強が過ぎました。今週末にいよいよJ2リーグが開幕します。
「ここまではあっという間でした。沖縄でのキャンプも含めてピッチの内外でチームの仲間たちと触れ合うことができて、すごく有意義な時間を過ごせています。誰もが優しく接してくれて、迎え入れてくれました。だからこそ、時間の経過が早く感じたのかもしれないですね」

――大宮入りにあたっては、クラブのプロジェクトに魅力を感じたという言葉がありました。その思いは強くなっていますか?
「はい、そうですね。どの選手、どのスタッフも真面目に、真剣に、サッカーと向き合っていると強く感じることができます。すごくいいトレーニングができています。自分の選択は間違っていないと、確信していますよ」

――長澤徹監督の印象は?
「自分が監督について話すのはおこがましいですけれど、すばらしい監督でありすばらしい人間という印象です。監督自身のフィロソフィーがあるなかで、選手に自由を与えてくれる部分があります。それと、監督が『このシチュエーションではこういうことが起こりやすい』とか、『こうすればこうなる』と説明したことは、実際に起こるんですよね。それはやっぱりすごいな、と。選手に言わなきゃいけない場面では、きちんと言ってくれる。褒める場面は褒める。人間としてもすごく尊敬できます」

生まれながらのリーダータイプ

――その長澤監督から、キャプテンに指名されました。
「最初に話をいただいたときは、とても光栄に感じました。監督としっかり話をして、『やります』と返事をしました。その責任を負わせてくれることに感謝します、と伝えました。もちろん、キャプテンだからといって特別な存在ではありません。チームをまとめる立場で、チームを引っ張っていく人間にもっともっとなりたいですが、ガブリエウという一人の選手でもあります。周りから指摘を受けなければいけないし、間違っていることがあれば遠慮なく指摘してほしい」

――前所属の横浜FCでもキャプテンを務めていましたね。
「アトレチコ・ミネイロの下部組織でも、キャプテンをやっていました。トップチーム昇格後に移籍したボタフォゴでは、副キャプテンを任されました」

――生まれながらのリーダーなのですね。
「お父さんが友だち同士のチームでキャプテンをやっています。ガブリエル家はキャプテン家系だな、ってイジられます(笑)」

――日本のクラブでブラジル人のガブリエウ選手が、キャプテンを務める。そこには難しさもあるのでは?
「リーダーには様々なタイプがありますが、自分は同じチームのメンバーとして、みんなを引っ張り上げる存在でありたい。自分から『こうあるべきだ』と言うのではなく、まずディスカッションをします。誰かに何かを言うのなら、その相手の話をきちんと聞く。誰かと誰かの間に立つのなら、両方からしっかりと聞いて、お互いを理解したうえで意見します」

――つまりは「対話型」のキャプテンなのですね。
「選手は大事な仲間です。一人ひとりがもっともっと活躍できるように、選手同士の関係において視野を広く持てるように、自分はコミュニケーションを取りたい。実際に、コミュニケーションをしていますよ」

――なるほど。
「選手は機械じゃない。人間です。一生懸命やっているけれど、何をしてもうまくいかないという日もあります。そこで、『何をやっているんだ!』という感じでプレッシャーを与えたら、マイナスでしかありません。うまくいかなくて苦しんでいる選手が、自信を取り戻せるような声がけをするべきでしょう」

――そのためにも、普段からコミュニケーションを取っておく、と。
「そうです。その日はうまくいっていない選手、少し自信を失っている選手を勇気づけて、本来のパフォーマンスを発揮してくれるようになれば、その選手にとってすばらしいことですし、何よりもチームのプラスになりますからね」

ブレなければJ1への道は開ける

――大宮の強みを教えてください。
「それはもう、団結力ですね。チームのみんなが、団結して同じ目標に向かっている。インタビューの最初に『すごくいいトレーニングができている』と話しましたけれど、このチームの選手たちはもう明日がないかのようにトレーニングをするのです。限られた時間のなかで、自分のすべてを出し切る。その日与えられた目標へ向かって、全員がしっかりと前向きに貪欲にやっている。僕だけでなく誰が見ても、団結したチームが同じ目標に向かっていると感じるはずです」

――ガブリエウ選手は横浜FCの選手として、J1昇格を果たしています。長丁場のJ2を勝ち抜くために必要なこととは?
「おっしゃるとおり、リーグ戦は長いので持続力が大事になります。シーズンを通してパフォーマンスを発揮しなければいけないのは当然ですが、難しい試合もあります。そこでは、最低でも勝点1をつかむ。負ける試合をできるだけ作らず、コンスタントに戦っていくのが大事です」

――好不調の波をできるだけ作らない、と。
「そうしたいのですが、波は起きるものです。波が下がったときに、いかに負けないかが大事になってきます。それに関連して、波が下がったときこそチーム力が問われます。その苦しい場面で、お互いが手と手を取って、一つにならなければいけない。その上で、自分たちがやってきたことを信じるのです」

――信じるとは、ブレない、ということですね。
「私たちには、プレシーズンのキャンプから積み上げてきたものがあります。それは、たとえば2試合連続で勝てなくても、なくなるものではない。自分たちを信じて、信じ切ってやり続ければ、難しい状況も絶対に克服できる」

――ブレなければ、苦境でも道は開ける。出口は見つけられる。
「そこで大切なのは、チームの強みとしてお話した団結力、チームの目標へ向かっていく力でしょう。みんなが自分たちを信じて同じ方向へ進んでいけば、難しい時期があっても必ず乗り越えられるでしょう」

――最後に、ファン・サポーターへメッセージをお願いします。
「ファン・サポーターのみなさんがいなければ、サッカーは成り立ちません。みなさんの声援は自分たちの後押しに、モチベーションになっています。これまでと同じようにサポートしていただけたら、年末には間違いなくみんなで喜びを分かち合えると思っています。スタジアムに足を運んでくれたらうれしいですし、この記事を読んでくれるあなたの支えが、チームの力になります」



戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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