五嶋京香 選手がVENTUSに来て、初めての公式戦で見せたプレーに、大きな期待を寄せた人は多いのではないでしょうか。156㎝のフィジカルを感じさせない予測力で、ピッチのど真ん中を主戦場とし、ボールを刈り取っていく姿に、手ごたえをつかんだ矢先のケガで約1年の離脱。その後練習に復帰するも、コンディションはなかなか上がってこず、再びのケガ。今シーズンはDF登録となり、定評のあるCBでVENTUSの守備を担います。その背につける“10番”への誓いを語ってくれました。
文・写真=早草 紀子
——新たなメンバーが多く入り、網走キャンプを経てチーム作りも見えてきた頃だと思います。
個人的にはまだ全然試合勘が戻っていないのが正直なところですが、そこはやっていかないと戻ってこないのでコンディション上げつつ、もうケガしないようにやっていくしかないと思います。VENTUSができて2年目のときに移籍してきて…、自分を基準に変われるものがあるんだったら、チームのためにやっていきたいと思ってたから、ケガしちゃってチームに絡めなくなって、何をしたらいいんだろう?という感情がずっとありました。ようやく、それを形にするシーズンが来た感じです。
——今シーズンは、フレッシュな選手が入ってきて、五嶋選手に求められることもありますよね。
ポジションが一番後ろになって全体的に見える位置なので、やなさん(柳井里奈 監督)からも、どんどん後ろから言っていってって言われてるので、コーチングや全体を見て相手によって守り方を変えていくことをしていきたいです。
——久しぶりの最終ラインはいかがですか?
違和感はなかったですね。最初に言われたときも、「あ、そう?OK! 」って感じでした(笑)。今シーズンのメンツを見ても後ろがいなかったから、これ多分、自分が後ろに入るんだろうなって思ってましたし…。ただ、今はまだいろんな人と組んでいて、(乗松)瑠華とは20分くらいしか一緒に並んでないんですよ。まあ昨年も人がいなくて、少しは一緒にやってたんですけど。そのときも「やっとちょっとだけ一緒にできるね」って言い合ってました。みんなからは、後ろの方がいいって言われるんですよね(笑)。若い選手たちは私のAC長野時代を知らないから、ボランチのイメージなのに後ろもやれるんだ…、みたいな感じですよ。
——初めて組む人の特長はつかめてきました?
それぞれ得意不得意はあるから、そこをつかめてきました。とにかく今のチームは若い! だから経験が足りてないのはあって…。でも何試合か練習試合やってきて、前からアグレッシブに行けているので、昨シーズンとはちょっと違うサッカーができてるんじゃないかな。そこに結果がついてくればタイトルとかも狙えるところまでいけるんじゃないかなと感じます。
——WEリーグも4シーズン目に入ります。今シーズンを戦う上で今、このチームに必要なこととは?
コミュニケーション! もう今はどれだけ喋れるか、だと思います。新加入の選手は人見知りな人も多くて…。いやでも最初だけですよ?GKの戸梶(有野里)は同い年なんですけど、最初全然しゃべらないし、シャイ…なんですけど、実はめちゃくちゃ面白い! そういう殻をどんどんこちらから破っていきたいですね。こう見えて(?)、自分も人見知りなんですけど、そこは積極的に話しかけることを心がけてます。
——五嶋選手が考える今シーズンの攻守のポイントを教えてください。
昨シーズンはクロスからの攻撃が少ない印象だったんですけど、今シーズンは早い段階からクロス練習をしているので、サイドからの得点が増えたらいいなとは今思ってるところです。そのときのリスク管理については監督からも言われているので、最終ラインとしてはしっかりケアしていきたいですね。あと守備はディフェンスラインだけじゃなくて、GKとの連係が大事。フィールドはファー切るからニアはGK絶対にやられないでね、とか。そのすり合わせをもっとやっていきたいです。ファーやられたらディフェンスラインの責任だ! くらいに自分は思ってるから。(今村)南海とは試合中も終わってからもすごく話すようにしてます。南海はハイボールに強いから、GKから声が出たときの自分の位置取りとか、昨シーズンから南海には話してて…。まあもっと声が出てもいいと思いますけど(笑)。
——やはり10番の覚悟というのも、今シーズンは違うものがありますか?
今回、背番号を変えようかと迷ってたんです。でも、10番を背負って何をしたかって言われたら、本当に何もしてない。変えるならこの1年間やりきってから変えようと思った。自分の中でやり残したものがある。後悔という言葉があってるかはわからないですけど…チームのために何かしたい、だから変えないっていう判断になりました。背番号が発表されたとき、サポーターの方から「これが大宮Vの10番だっていうぐらい頑張ってほしい」、「サポーターは五嶋さんのフルパフォーマンスをまだ見れてないから」って声をもらって、変えなくてよかったと、改めて気持ちが引き締まりました。
——最初のケガ前のパフォーマンスが強烈に印象に残ってるんですよね。
2022-23シーズンのカップ戦でのダービーですよね。アディショナルタイムまで浦和に勝ってたのに…、ギリギリでやられて同点で終わるっていう、私のVENTUSデビュー戦。衝撃的だったとよく言ってもらえますけど、自分ではわからないです(笑)。
——VENTUSのウイークポイントとされていた中盤の奪い所が明確になって、五嶋選手の存在が効いてるのがガッツリ見えた試合だったからでしょうね。今シーズンはCBとして、新たな効力を見せてくれそうですね。個人的な目標を教えてください。
WEリーグ1年目にCBとして優秀選手に選んでいただいたんですけど、もう1度そういう枠に入れる選手になりたいんです。あれは各チームの監督や選手が選ぶものだから…、やっぱり特別なもの。小さい花ですけど(笑)、咲かせたいです!
早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。