第2回のゲストはVENTUSの守護神・今村南海 選手です。インタビュー中の撮影にも関わらず、ずっとカメラ目線を寄越す今村選手に仲田選手も大爆笑しながらのひととき。初シーズンからの月日を経た二人ならではの、「あゆの部屋」になりました。
文・写真=早草 紀子
最初はキャラの探り合い
仲田歩夢(以下、仲田) もう初年度からの付き合いですよ。印象でいったら、めっちゃ変わったよ、南海は! 最初は、なんか大人しくて、静かな感じだった。グチも言わず、ニコニコ笑ってる感じ。
今村南海(以下、今村) 今も、変わらないでしょ(笑)。
仲田 どこが! もうめっちゃ喋るし、むしろうるさいぐらい。こんなに喋るヤツだったとは…。あんなに陰キャだったのにね(笑)。
今村 それは自分で自覚がある(笑)。喋れるんですけど、本当に真新しい環境にポン! と入れられると、最初はああなっちゃう(苦笑)。
仲田 殻を破るのに一年くらいかかったんじゃない?
今村 かかったね。一年かけてやっと慣れてきたんだと思う。
仲田 最初はイジってもいいのか、ダメなのかもわからない感じだったから、絡み方がムズかった。これはねぇ…、上の年代の方が気を使うんですよ、結構。でも大丈夫なんだってわかって、周りがつつき出したんだよね。
今村 VENTUSで鍛えられたわけじゃなくて、もともとイジってもらって大丈夫なんです。そうやってここまで来てますので(笑)。今思えば最初に「こんなんですけど、イジってください! 」って言えばよかったんですけど、人見知りなので、そこまで気が回らなかった。
仲田 こっちも南海情報が皆無だったからね。本当に初めまして、で…、これまで生きてきたコミュニティが違い過ぎて、人脈が一切かぶらないもんだから、南海については少しずつ距離をつめるしかなかった。だからプレー中も普段も大人しいんだな~って…。いや完全に騙されたわ。
今村 人聞き悪いな。騙しては、いない(笑)。
仲田 初年度は(杉澤)海星とかも、人見知りで…。でも2人仲良いよね。人見知り同士はどうやって交流を深めるの?
今村 海星も自分もしゃべれない訳ではないから…、そのお互いの感じでウマが合うのはわかったかな。歩夢さんはもう“歩夢さん”だから。それが4年経って…(無言)。
仲田 え! 南海のことは上げてあげたのに、こっちは下げる気?
今村 違う、違う! 4年経っても変わらないって言いたかったの!
仲田 前回、(金平)莉紗にも「最初は怖かった」って言われたんだよね。でも、第一印象それなら、あとは上がる一方だからいいよね、って。
今村 別に怖くはなかったよ、全然! 今も変わらずキラキラしてるもん。
仲田 え~なに、キラキラってぇ(照れ照れ)。…嬉しい!
成長過程が目に見える守護神
仲田 ここまでの4シーズンでお互い成長したところ、あるかな。
今村 歩夢さんの成長! ?そんなのおこがましくて言えないですよ!!
仲田 なんで、教えて?教えて?
今村 え~?歩夢さん、褒めてみてくださいよ。
仲田 新しいな(笑)。南海の変わったところ、めっちゃいっぱいあるよ。最初からもっと自信持ってやったらいいのにな、とは思ってたんだよね。絶対できる技術はあるから。でもなんか自信なさそうだった。それをどんどん出せるようになってきてるのは一緒にやっててわかる。ピッチ上での声とかもね。
今村 今も、自信を持ってやれてるわけではないんだけれども(苦笑)。
仲田 今シーズンに入ってからは、特に自覚も出たんだと思うけど。私とかは年齢もあるし、ある程度の経験をしてきてるから、そこまでの成長の振り幅はないけど、南海にはそれが見て取れるからすごいと思うよ。今シーズン一番最初のクラシエカップの日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦とかは、ゴールを決められちゃってもおかしくないシーンが本当にいくつもあったのに、あれをゼロで抑えられたのは南海の存在が大きかったよね。意外と南海は謙遜しがちだけど(笑)。
今村 そうなら嬉しいけど…。でもあの試合はDFがちゃんとシュートコースを限定してくれてたから。あれだけ、守備がハマってるときって、ちょっとハイになる感じもあったりして。みんなが寄せ切ってくれて、いいトコもらった感じはしてました。勝てたら一番よかったんですけどね。
仲田 南海は、どんな時に一番テンション上がるの?
今村 えー…、そんなにないけど、昨シーズンのホームでのジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦でのプレーかな。めっちゃ攻め込まれてクロスを上げられることも多かったんですけど、最後、シュートを左手で弾いたのは、タイミングが完璧だった。練習の成果が出たプレーだったから、あれは上がった! 歩夢さん的に上がったのは…、きっとアレだよね?あ、待って! 2択だわ(笑)。
仲田 どうせ昨シーズンのWEリーグカップのINAC神戸レオネッサ戦のゴールか、アウェイのサンフレッチェ広島レジーナ戦のフリーキックって言うんじゃないの?
今村 どうせって言うな(笑)。それだけど…。
仲田 でしょ(笑)?フリーキックはもう最初から狙おうって決めてたけど、I神戸戦のゴールは流れからだったし、トラップがピタッていいところに置けるまではあそこから打とうって思ってなかったから、自分でも「うわーっ! 」って上がった! もう1回やれって言われてもできないなって思うくらい無意識みたいな感覚だった。
今村 でも言うよ。「ぜひもう1回やって! 」(笑)。
仲田 あははは(笑)。でも、逆に言えばあそこまで一発で展開が変わってきたのもすごいし、ボールの動かし方もめちゃめちゃ良かったよね。
今村 今シーズン狙ってるゴールの形とかある?
仲田 ちゃんとここは決める! っていう得点が欲しい。綺麗な点じゃなくてもいいから、ここぞっていうときにやっぱり点を取りたいなって思う。
今村 見たいな、歩夢さんの左足ズドーン!
仲田 思い切り擬音(笑)。ゴール前とか崩しとか、できるだけ押し込んだ状態でボールを動かすとかっていうのがちょっとまだ課題としてあるから…。もっと優位な状態で仕掛けたいよね。ここから! っていうところで、ちょっと雑になっちゃったり、淡白なプレーすぎて切れちゃったりとかする。
今村 押し込んだところとか、正直後ろからだとあんまり見えない(苦笑)。でも見えてたら、自分から一本通そうとも思うし、横パス入れてからタテに差すとかの動きをもう少し入れられたら展開は変えることができると思う。
苦しいときこそ前向きな声掛けを
仲田 今、“ブレイク”がテーマだから、ちょっとそこに引きずられ過ぎてるところもあるから、そこの判断が大事。そういうのは、ボールの出し手にかかってくるよね。イノ(井上綾香)とか前に抜けられる人もいるし、そこに出せなくても、抜けてくれたからこそ出来たスペースを無駄にはしたくない。その意識をみんなが持てるように…、意識的なもので変わってくると思うんだよね。
今村 そうだよね。自分はとにかく少しでもムードを上向きにしたいときは、シュート打ったら結構褒めてる!
仲田 小学生(笑)?でも、そういう南海のポジティブな声掛けはよく耳に届くのは確か。
今村 そっちの方がみんな上がるでしょ。
仲田 去年とかも勝てないと自分も悔しくて落ち込んだけど、そういう雰囲気のままずっと戦うことはできないから。この試合で終わりじゃなくて続くわけだから、「次に向けて切り替えて準備しよう! 」って、まだシーズンは始まったばかりだから、顔を上げられるような声掛けは私も必ずするようにしてるかな。
今村 今、特に前めのポジションの人は、点が取れないことがすごいプレッシャーになり過ぎちゃってるよね。
仲田 それはあるね。でも先制点取れたら、流れにのってくからVENTUSは。単純というかわかりやすい。だからこそ前半に点が欲しい!
今村 自分ももっとキック練習しよ! 裏返せるキック力が欲しいの。
仲田 飛距離?
今村 その一本でゴールに結びつくような、ね。
仲田 そりゃ、ひたすら蹴り込むしかないね。
今村 まだ始めて2か月だから、がんばる! ひょっとしたら少しは伸びてるかもしれないし、長い目で見てもらえると…。
仲田 ウチらサイドの前あたりまでは、めちゃくちゃいい精度のキックが来るから、アシストのアシストならもうクリアしてるけどね。ってか、話変わるけど…、南海の爆笑した時にだけ出る引き笑い、なかなか変だよね。ちょっとやってみて?
今村 できるか(笑)!
仲田 さっきも誰かに「ホント笑い方ヤダ」って言われてたよね。笑ってるのに苦しそうで、なんか心配になる(笑)。
今村 そう言われ続けてここまで来ましたー。
仲田 ファン・サポーターのみなさん! 南海を爆笑させられたら、妙な引き笑いが見れますよ(笑)。
今村 そのつながりでいくと、歩夢さんは愛想笑いが多いよね。
仲田 優しさと言ってくれる?例えば…、若い子たちが話してるとき、私にはハマってないけど、みんな笑ってるからちょっと微笑む、みたいなのはある(笑)。理解できないけど、楽しそうでいいね的な微笑み、よ。
今村 温かみ、ってヤツか。
仲田 そう! ピッチでなかなかうまくいかないことも多くても、こういう笑い合える雰囲気はVENTUSの良さだから、なくさないようにはしたいよね。もっとお互いに要求する声も必要だと思うし、そういう場面が増えてきてはいる。それをより一層出していくためにも、声掛けは続けていこうね。
今村 そう思う! 人見知りとか、要求するタイプじゃないとか言ってる場合じゃないから。上位対決でも食らいついていきたいし、とにかく無失点を狙い続けます!
仲田 一つのゴールで流れはきっと変わるから…勢いを作ろう!
早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。