【VENTUS PRESS】甲斐碧海

前半戦を終えてわずか2ゴールと苦しんでいる今シーズンのVENTUS。そのうちの1ゴールは昨シーズン途中から加入した甲斐碧海 選手によってもたらされました。ピッチ上ではポーカーフェイスを貫く甲斐選手が、見せた力強いガッツポーズ。彼女の笑顔とともにより多くのゴールを見たいと思う人も多いはず。今回のVENTUS PRESSはそんな甲斐選手が後半戦へ向けての想い、そして意外なプライベートの様子も語ってくれました。


Vol.65 文・写真=早草 紀子

「ワンタッチで味方とつながるタイミングでボールを受けるべく奮闘中です」 甲斐碧海

—甲斐選手のオフの姿が謎です(笑)。
基本的に計画性がないタイプなんです。髪を切るとか、トレーニングに行くとか予約が生じるものがなければ、起きてからやることを考えます。それが「何もしない」につながることもあります(笑)。K-POPが好きなので、そのグッズとかを買いに行くこともありますよ。TWICEはアルバムのジャケットとかかわいいから絶対に購入します。いっぱいグッズもついてくるから、それが楽しい! みんな好きだからいわゆる箱推しですね。NewJeansも好きなんですけど、イラストレーターの村上隆さんとコラボしたキャラクターがあって、それがめちゃくちゃかわいくてかわいくて~。特にヘリンちゃん推しです!

—熱量がすごいです(笑)。“クールだけど天然”みたいな印象があったので意外でした。
周りからよく「不思議系だよね」って言われるんですけど、そこは自分でも納得してて、異論はないです(笑)。第一印象は怖いとか、何考えてるかわからないと言われがち。表情にあまり出ないので掴みにくいんでしょうけど、全然怖くないし、しゃべっちゃえばチョロいんです(笑)。他の人と密に関わっていなくても大丈夫なタチ。誰かと一緒じゃなきゃ楽しめないとかはなくて、自分で自分の幸せを作れます(笑)。

—それは滲み出てますね(笑)。音楽以外でハマっているものはありますか?
ウサギを愛でること。飼ってるんですけど、めっちゃかわいいですよ! 去年の今頃に手に乗っちゃうくらいの小ささで我が家に来て。「おもち」って言います(笑)。なでてほしがりで、そばから離れないんです。あれ完全に運動不足(笑)。姉がいきなり買って帰ってきたんですよ。でも姉の部屋は寒いということで、自分の部屋に小屋がある(笑)。おもちを解き放つのも自分の部屋で…。扉が開いてても、絶対に部屋に外には出ないのでおもちの世界は自分の部屋だけなんです。

—ほ~。…あれ?誰のうさぎさんでしたっけ?
姉です(笑)。

—甲斐選手は実家通いということですが、よく出没するスポットはどこですか?
それは葛西臨海公園! とにかく広くてみんなお散歩しててのんびりしてるんですよね。海をぼーっと見るのも好きです。でも長い休みには海外旅行にも挑戦してみたいです。今、スイスに行きたくて。あの大自然を自分の目で見てみたい。あとはベネツィア! 船で街中を巡ってみたいです。自分はおそらく一人旅も楽しめるタイプだと思うので、手始めに国内旅行から慣らしていこうかな(笑)。

—なんだかとても頼もしいですね。ではここからはサッカーの話を。ポジション歴を教えてもらえますか?
小学生のときはトップ下、中学生のときにCB、ディフェンスラインをやって、徐々にボランチ、シャドーとかをやるようになりました。サッカーでいけるところまでがんばろう! って目標を定めたのは意外と遅くて大学3年のとき。悩むこともあったんですけど、大学3年のタイミングで指導者が変わったことでチーム内の雰囲気もガラッと変わったんですよね。そしたらなんか楽しくなってきちゃって(笑)。ただ、就職活動的な練習参加を巡ってもなかなか決まらなかったんですけど…。

—そこでサッカー観が変わったということでしょうか?
サッカー観で言うと、中学の頃で、それが自分の軸になってると思います。当時指導してくれた方のサッカーが超面白くてハマってしまった(笑)。実際、スキル面でも成長しました。とにかくつなぐんです。そのために必要なボールの受け方…、一歩動くだけでその先の選択肢が広がるんだって言われて。うまく言えないんですけど、それがちょっと特殊なんです(笑)。中学生にしてはかなり組織的なサッカーをしていたと思います。周りのチームメイトも同じ感覚で、これは一人でできることではないから、すごく楽しかった! あの時間がなければ、今自分はここに立てていないです。スペースの見つけ方や、そこに入ってターンして攻撃参加する形が得意になったのもこの時期です。

—一歩の違いで状況を変える、その成功体験を中学生ですでに経験していたんですね。WEリーグでも当時の感覚が効いてる瞬間はありますか?
ターンに関しては、手応えはあるんですけど、その先のプレーがまだまだで…。アウェイのサンフレッチェ広島レジーナ戦で、ななめ後ろからボールを受けたとき、自分は相手に囲まれてたんです。ターンで抜けきれはしなかったんですけど、いつもの自分だったら前を向くことは選ばないだろうなっていう場面で前を向けた。そのあとのパスがイマイチだったんですけど、そこでターンできたのは成長を感じた一瞬でした。

—そんな甲斐選手が今、一番欲しい能力はなんですか?
いっぱいある…。でも一番は予測力です。柳井(里奈)監督から最近よく言われるんですけど、「誰からボールを受けるかを予測してもう一個早くポジションを取れるはず。それができたら相手と対峙する前にいい身体の向きでボールを受けられるから」って。いいポジションを取るために早く予測したいんです。そのためにもタイミングを大事にしようと思っていて、ワンタッチで味方とつながれるタイミングに受けられるようにしていこうと奮闘中です。(北川)愛莉さんや(上田)佳奈とか…、まあ佳奈はずっと一緒にやってるのもあると思いますが、言葉で伝えなくてもわかりあえる。感覚が似てるのかもしれません。

—今シーズンは苦しい前半戦でした。この中断期間中に変えていきたいことはありますか?
前半戦はつなごうとはしてたんですけど、裏狙いのロングボール一本が多くて、結局相手ボールになってしまう。それは出し手に問題があるというよりは、(自分たち)受け手がコースを作らないからそういう選択になってしまうんじゃないかと個人的には感じてます。しっかり選択肢になるために中盤は顔を出す、周りとつながる意識を徹底していけば、みんな同じ絵を描いてビルドアップできるはずなんです。もっといろんな人がつながってゴールまでいけるようにしていきたい。本来自分はそういうスタイルが好きなので。少しずつですが、“つながる”瞬間は増えてきています。

—今シーズン掲げている目標を教えてください。
もともと3得点を設定していて、あと2点! 相手陣地でボールを保持して、自分がターンして前を向く、FWにあててー。これを繰り返してどんどん侵入していく形が理想なんです。中断期間にFW陣が加入して、新しい風が入ってきました。今まで自分たちにはなかったリズムでシュートが生まれてます。もちろん自分たちで結果を出せなかった悔しさもありますが、収める系の2人が入ったので、自分も飛び出せる場面が増えてきたのでうれしいんです。もっと攻撃参加しながらゴールを狙いますので、ファン・サポーターの皆さんには、そういう変化を楽しみにしてもらえるとうれしいです。


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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