ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、2025シーズンからアルディージャに加わった新加入選手紹介の第2回をお届けします。
【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
新加入選手紹介 第2回
個の力で戦えるブラジル人CB
J1昇格の横浜FCを離れ、J2で戦うことを選んだ。
「横浜FCに残ってJ1で戦う選択肢もありましたが、1年でJ1へ昇格するというRB大宮アルディージャのプロジェクトに惹かれました。それに、自分は新しいチャレンジをするのが好きなのです」
2021年夏から横浜FCに在籍し、J1、J2で通算67試合に出場してきた。日本では初めての移籍となるものの、すでに日本サッカーにはフィットしている。
前所属チームでは3バックの右サイドを基本ポジションとしたが、4バックのCBとしてもプレーできる。足元の技術もしっかりとしており、ビルドアップにもかかわっていく。さらには空中戦の強さを生かし、リスタートでは得点源になる。
横浜FCでは主将の腕章も巻いた。最終ラインのリーダーとなり、若手選手の模範となることも期待される。
「若い選手が自分のプレーを見て学ぶことがあるとしたら、それはとてもうれしいことです。同時に、私自身もチームメートから学ぶことがあります。たとえば、(市原)吏音は多くのDFが持ち合わせていないような技術の高さがあります。ピッチではチームメートと助け合い、チーム全体にいい影響を与えていきたいですね」
総合力の高いブラジル人CBは、守備の問題を「個」で解決できる。キャリアの円熟期を迎えた29歳が、新たな背番号「55」を着けて躍動する。
Profile
1995年3月14日生まれ、ブラジル出身。180cm/80kg。
アトレチコ・ミネイロ(ブラジル)→ボタフォゴ(ブラジル)→アトレチコ・ミネイロ(ブラジル)→横浜FCを経て、今季より大宮に加入。
パワフルかつ創造性豊かなレフティ
2023年、2024年とプレーした横浜FCでは、3-4-2-1の「2の右」を主戦場に、攻撃に違いを生み出してきた。チームがJ1昇格を果たした昨シーズンは、7得点4アシストを記録している。ドリブル、パス、シュートのいずれもがハイレベルだが、その中でも利き足の左足から放たれるシュートはパワフルかつ高精度だ。ペナルティエリア外からでも、ゴールの隅を正確に打ち抜いてみせる。
大宮入りについては、「クラブのポテンシャルの高さを感じた。J1昇格というプロジェクトに自分も参加したかった」と話す。J1自動昇格を果たした昨シーズンの経験は、チームの強みになるだろう。
「昇格するためには勝ったり、負けたりを繰り返すのではなく、やはりコンスタントに勝ち続けることが大事です。自分たちが上位につけている状況でも、1試合、1試合を死に物狂いで戦う。それからお互いを信じ合う、自分たちがやっていることを信じるのも大切です」
横浜FCでは背番号10を着けたが、大宮では29を背負う。特別な思いを込めて。
「プロサッカー選手だった父が着けていた番号なのです。私がこうしてプロとしてプレーできているのも、父の影響がとても大きいのです」
創造性あふれるプレーで、カプリーニは勝点奪取に力を注いでいく。
Profile
1997年11月11日生まれ、ブラジル出身。170m/77kg。
ジュベントゥージ(ブラジル)→アトレチコ・パラナエンセ(ブラジル)→ジュベントゥージ(ブラジル)→ECバイーアB(ブラジル)→エスポルチーヴォ(ブラジル)→ジュベントゥージ(ブラジル)→イピランガRS(ブラジル)→ジュベントゥージ(ブラジル)→ロンドリーナEC(ブラジル)→横浜FCを経て、今季より大宮に加入。
超絶技巧を駆使して前線で勝負
プロサッカー選手として「勝負の年」と位置づける。
「(前所属先の)京都との契約はあったんですけど、大宮が獲ってくれるということで、覚悟を持って来ました。1年でJ1へ上がるという強い気持ちを持って来ました」
京都サンガF.C.で、2020年にプロデビューを飾った。2021年のシーズン途中に栃木SCへ期限付き移籍し、翌2022年は栃木で主力を担った。2023年はJ1へステージを上げた京都へ復帰し、2024年はシーズン途中から韓国K2リーグのFC安養へ期限付き移籍した。
プロ6年目となる今シーズンは、これまでの経験をピッチではっきりと表現するタイミングと言っていい。それゆえの「勝負の年」なのだろう。
キャリアの節目のタイミングで、大宮と交わっている。2020年9月のプロ初先発も、2021年10月のプロ初ゴールも、大宮とのゲームだった。昨年6月の天皇杯2回戦でも、2-0の勝利につながる先制点をゲットした。
「NACK5スタジアム大宮は、コンパクトで雰囲気があるなあと思っていました。大宮のサポーター側へ攻めるのは壁があるような感じで難しかったんですけど、これからは頼もしいですね」
テクニック自慢のファンタジスタで、中盤から前線にかけて、様々なポジションでプレーできる。
「どういうフォーメーションになるのかまだ分かりませんが、去年の形ならシャドーでスタメンを取りたいですね。前目のポジションで勝負したいです」
京都で師事した長澤徹監督のもとで、才能を全面解放する。
Profile
2001年11月1日生まれ、新潟県出身。171cm/69kg。
長岡ジュニアユースFC U-12→長岡ジュニアユースFC→帝京長岡高→京都サンガF.C.→栃木SC→京都サンガF.C.→FC安養(韓国/※2024年6月より期限付き移籍)を経て、今季より大宮に加入。
戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。