バンクのゴールで追いつき、価値ある勝点1を獲得
天皇杯から中2日で迎える明治安田J2第4節の相手は、長澤徹監督が率いる湘南だ。
チケット完売のホームで戦えるのは心強い。とはいえ、現在につながる大宮のベースを築いたとも言える長澤監督の下には袴田裕太郎、下口稚葉、アルトゥール・シルバなど、ともに戦った仲間も多い。決して簡単な試合にはならない。だからこそ、ナダル監督の下で成長している大宮の姿を見せたい。
リーグ戦で唯一の3連勝、首位に立つ大宮の状態は良い。3日前の天皇杯では、交代出場が続いていた杉本とスファナット・ムエアンタ(バンク)がゴールを決めて、存在感を誇示した。また、エドワードと小林が公式戦のピッチに立ち、ともに17歳の井芹と兼頭の2人がトップデビューを果たした。今節も、積極的に若手を起用するレッドブルの揺るぎない方向性とチームとしての総合力によって、2位につける湘南との差を広げたいところだ。
小雨が降るなかでの決戦は、大宮のキックオフでスタートした。加藤聖が相手陣内の深くに蹴り込み、前で勝負する姿勢を示す。その積極性が、すぐに形になる。開始3分、右サイドからカプリーニが入れたクロスにファーサイドの泉が合わせる。相手GKに止められたが、最初の決定機だ。
湘南の寄せは激しく、セカンドボールへの反応も早い。中盤でのともに譲らないデュエル勝負のなか、違いを見せたのがカルリーニョス・ジュニオだ。複数人をドリブルで剥がし、局面を前へ進める。最後は相手のファウルに止められたものの、ここで得たFKが2度目の決定機を生んだ。
ボールの前に立つのは、左足の加藤聖と右足の泉。キッカーはどちらで、直接なのか合わせてくるのか。次の瞬間、加藤聖の左足から放たれたボールが鋭い軌道を描いてゴールへ。しかし、ほんの少しだけ高く、クロスバーを掠めて枠を外れていった。
その後も中盤でのボールの奪い合いは苛烈で、とりわけシルバは気迫に満ちたプレーでカプリーニらと熱いバトルを繰り広げていた。30分、ビルドアップのボールを奪われて失点。さらに7分後、再びパスをつなぐことができず点差を広げられてしまう。前半終了間際、押し込んで得たFKも相手に跳ね返されると、2点ビハインドで後半に挑む展開となった。
今季、リードを許して前半を終えるのは初めてのこと。ナダル監督から「このままじゃ終わらないぞ」と檄を飛ばされた選手たちが後半、いかに立て直すか。
後半開始早々、最初にチャンスを創出したのは大宮だ。中盤で縦にドリブルを仕掛けたカプリーニが、シルバに倒されてFKをつかむ。加藤聖のボールは相手に弾かれたが、こぼれ球を拾った小島のクロスを豊川が頭で叩く。ゴールライン上で相手にクリアされたが、得点の気配が濃くなり始める。
最初の選手交代は60分。泉に代わり、バンクがピッチに飛び出していく。さらに68分、ナダル監督は小島と加藤玄を下げて杉本と中山を投入する。中山がアンカーに入り、豊川と杉本がインサイドハーフを務め、前線にカプリーニ、カルリーニョス、バンクが並ぶ布陣でゴールを目指した。
すると74分、杉本がドリブルを仕掛け、そのこぼれ球を運んでカルリーニョスとワンツーをかわした豊川が、ペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。これをカルリーニョスが冷静に左サイドに流し込み1点差。残り時間は約20分。スタジアムがより一層の熱気を帯び、選手たちを後押しする。
豊川が一気のカウンターでボールを運ぶが、関口の低いクロスが合わずに逆襲を食らう。だが、ここは尾崎が落ち着いて対応。素晴らしいスピードと読みで1対1を制し、ピンチの芽を摘み取った。
残り時間が刻々と減る中、攻め上がった中山のシュートがゴールを襲い、相手選手が一発退場。数的有利な状況となり、大宮の勢いが増す。バンクがCKをつかみ、カプリーニのクロスにカルリーニョスが頭で合わせる。その後も前線に人数を掛けて波状攻撃を見せる。
歓喜の同点弾は90分+1分。中山からパスを受けた加藤聖が縦にドリブルを挑み中央へ。このボールに反応したバンクが左足を振り抜くと、強烈な一撃がGKの手を弾いてゴールネットに突き刺さった。5分のアディショナルタイムにも攻め続けた大宮は、2点差を追いついての価値ある勝点1を手にするタイムアップの笛を聞いた。
ナダル監督は2点差を追いついた選手たちについて「最後の最後まで戦ってくれたことを誇りに思う」と称え、ファン・サポーターに対しても「並外れたサポートをしてくれた」と賛辞を口にした。天皇杯に続いてゴールを決めたバンクは「決勝戦を戦っているつもりで蹴り込むことができました。2試合連続でゴールを決められたことはとても嬉しいです。今後も先発、交代出場に関係なく、チャンスをもらったらすべてを捧げたい」と、謙虚に前を向いた。
勝点1を積み上げて首位の座を守った大宮は次節、アウェイで秋田と対戦する。
(総評:粕川 哲男)
監督コメント
前後半で片方ずつのチームが良かったのではないかと思っています。二つの、お互いにとてもいいチームが試合をした形だと思います。どちらか言うとわれわれのほうがどんどん前向きに、前から攻撃に行けていたような気はしますが、ただわれわれにとって必要だったのは最後に決め切るところだと思っています。ゲームの最初に、(泉)柊椰のビッグチャンスもあったかと思います。2失点はしてしまったのですが、自分たちはそこで諦めたり、このゲームを手放したりすることなく、チームとしてこのゲームに勝てる、追いつける、逆転できる、そのように信じ続けることができたと思います。ここまで無失点のチームに対して、2点を取ることができました。ここまで得点できたチームがいなかった中で、それは難しいことだと思っています。
本当に残念だったのは、最後に3-2で試合を終わることができなかったことです。取り消された得点は、コンビネーションがあって、サイドから来たボールをカプリーニが決めたいいプレーでした。ただ、人生でもフットボールでも本当に難しい状況であったり、こういったことはたくさん起こるものだと考えています。それでも、われわれのこのチームに関して、自分は本当に誇りに思っています。
また、今日に関してはファン・サポーターの皆さんに、特別な言葉を送りたいと思います。本当に並外れたサポートをしてくれたと思っています。試合中、ずっとわれわれのそばでサポートしてくれたと感じましたし、ウォーミングアップからそういった形で自分たちは彼らの存在を感じることができました。チームにも、「ここのピッチに集まっている人、このスタジアムには、本当にこの街の情熱が詰まっているぞ」、「これは守っていかなくてはいけないし、こういった関係性を続けていくことがわれわれにとってとても大事なんだぞ」という話をしました。自分は彼らファン・サポーターの存在に関して、本当に驚いていますし、とても喜んでいます。こういったサポートを受けることは本当にすばらしいことだと思っています。
選手コメント
得点の場面はチャンスだと思ったので、しっかりとゴールを狙って蹴り込みました。ボールを受けたらいいタッチからゴールを決めようと思っていて、気持ち的にはただの1試合ではなく決勝戦のようなイメージで、しっかりと左足で蹴り込んでゴールを決めようという気持ちでした。どちらかというと体が勝手に反応したというか、自然に動いたという、そういうシュートだったかなと思います。
(公式戦2戦連続ゴールは)非常にうれしいです。結果を見たときに、負けで終わらなかったのはチームとしてもいいことだと思います。今回決めたのは自分でしたが、チームの誰が決めてもおかしくない、そういったクオリティを持ってる選手がたくさんいます。今回は運が良く自分にそれが転がってきて、いいポジションでシュートを狙えてしっかりモノにできたということだと思います。連係も高まってきていると思いますし、自分はその中の一員としてこうやってしっかりとチームを助けられたことはうれしく思います。
途中出場でもスタートから出ても、自分が考えているのはチャンスをもらったらしっかりとすべてを捧げるということで、自分ができることを100%出していくことです。チームのスカッドを見たときに、やはりクオリティの高い選手が非常に多いのが、この大宮だと思います。そこで自分が何ができるのかというところで、チャンスをもらったときにはしっかり自分がやれることをやって、チームを勝たせるということを考えています。
Jリーグは、戦術的にものすごくインテンシティが高いなという印象です。すべてのトレーニング、すべての試合でみんながハードワークをしますし、インテンシティが高い中でやっているので、もちろんその中で自分の良さを出していかなければいけないですし、まだ順応していかなくてはいけないと思っています。
(相手選手の退場の場面について)相手の足が見えたんで、かわせれば一番良かったですが、相手が滑ってくれました。そこからは大宮のペースだったので、そこで差し切れればよかったですね。バンクが同点ゴールを決めてくれて、でも3点目を決められなかったのは、悔しいです。
失点の形は、ああいうサッカーをやっている中であのミスはあるものだと思うので、失点するのは良くないですが、そこはまあ割り切ってではないですが、でも1つ返せば絶対いけるという手ごたえはみんなで感じていました。いい時間に点が入りましたし、それだけに勝ち切れなかったことが本当に悔しいです。
最後のクロスの部分だったりドリブルもけっこう対策されていて、個人的にはなかなか悔しいゲームになりました。クロスとかそういう大事なところで違いを見せられれば、もっと怖い選手になれるのではないかと思います。そこは次の課題だと思うので、体がきつい中でもそういうところは練習でこだわるしかないですし、また頑張っていきたいと思います。
今日はとても疲れました。交代する間際は体がけっこうキツかったです。前半は、球際とかセカンドが湘南のほうが速くて、なかなか相手のゴール前まで持っていけるシーンが少なかったし、苦しかったです。失点のところはミスからだったので、少しもったいなかったと思います。(ハーフタイムは)もう気持ちの面の話だけでした。1点取れば盛り返せますし、それで士気が上がる感じでした。監督は「この試合はひっくり返せる」と言っていました。
2点を追いついたのは、今のこのチームの強さがあると思うんで、それは自信になると思います。百年構想リーグでもあまりなかったですし、2点ぐらい取られるとズルズルいっちゃうことがありましたが、それを追いつけるというのはやっぱり力がついてるのかなと思います。相手の退場もありましたが、それでも2点追いついたのはすごいと思います。
(長澤徹監督には)試合のあと、部屋に行って挨拶しました。「心の奥底に自信、持ってるでしょ。それをずっと持っておけよ」と言われました。いいこと言うなと思いました(笑)。
フォトギャラリー
Facts
主審 | 中川 愛斗 |
|---|---|
副審 | 植田 文平, 清水 拓 |
第4の審判員 | 菊池 俊吾 |
入場者数 | 11,657 |
湿度 | 90% |
ピッチ状態 | 全面良芝 |
気温 | 20.8°C |
天候 | 曇 |
Kickoff time | 2026年8月29日, 19時00分 |