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「7試合ですよね……」
奥抜侃志が振り返ったのは、ベンチにも入れなかった苦しい期間のことだ。第11節、0-2で敗れたアウェイのモンテディオ山形戦の前半のみで交代したのを最後に、約1カ月間まったく試合に絡めなかったのだ。
昨季も長く戦列を離れたが、それはケガによるもの。コンディションが万全なのに試合に出られない状態は、感覚的にはサッカー人生で初めてのことだった。
「今まで経験したことがなかったので、メンタル的にも厳しい時期がありました。悔しさとか焦りとかがあって、最初はベクトルを自分自身に向けられなかったんです。だけど、しっかり現実を見つめ直して、自分に足りない球際の強さなどを補うしかないと思えたんです。早い段階でそこに気づいてトレーニングを積んできたことが、僕にとって大きかったのかもしれません」
そして前節の東京ヴェルディ戦。相馬直樹新監督のもと、チャンスがめぐってきた。じつに8試合ぶりのメンバー入り。しかも、先発出場に気持ちがたかぶった。
「ここしかないぞって。ここで結果を残せなかったら、確実に自分の実力が足りないってことだし、今後試合に出られなくても仕方がないと。だから、絶対にゴールを決めようって。もちろんチームの勝利が一番でしたけど、僕自身はゴールのことだけを考えていました」
1点を追う58分、河田篤秀のパスが足元に届いた瞬間、「自分でもびっくりするくらい落ち着いていました」と言う。GKの位置もシュートコースも見えており、冷静に今季初ゴールを決めてみせた。
それでも勝点3を手に入れることはできず、個人的なプレーにも悔いが残った。例えばゴールを決める数分前、矢島慎也のスルーパスを呼び込みペナルティエリア内に侵入したシーンを思い出すと、苦笑いを浮かべた。
「何回か映像を見直しました。相手がついて来ていると思ったんですけど全然来ていなくて。だいぶ振り切ってフリーだったので、前を向けばよかったなって」
瞬間的スピードで相手の背後を突く、あるいは危険な位置に飛び込む自身の持ち味が出たシーンでもあるので、「次こそは」の思いを強める。
今季ここまで7試合出場1得点。だが、勝ち試合では一度もプレーしていない。その責任を強く感じて、「自分がゴールを取って、チームを勝たせたい」と意気込む。自信と躍動感を取り戻した背番号11の輝きは、今度こそチームの勝利に結びつくはずだ。
(粕川 哲男)
“浮上の兆し”を感じたことは、今季これまでも何度かある。この勝利で、あるいはこのドローで流れをつかめるのではないか、と。例えば、連敗を阻止した第10節の千葉戦や、粘り強く追いついて勝点1を獲得した第14節の大分戦の後には、いよいよ逆襲が始まると胸を高鳴らせたものだ。
しかし、絶対に勝たなければいけなかった先の岩手戦のように、ここぞという一戦で精彩を欠き、完全にはトンネルを抜け出せていない。
琉球に競り勝ち、監督交代を経て迎えた前節の東京V戦は、大分戦に続いて今季2度目、1点を返しての勝点1獲得だった。後半の頑張りと終盤の攻勢は今後への期待を抱かせるに十分だった。だからこそ順位の近い水戸相手にホームで勝利をつかみ、はい上がりたい。
悪い流れを変えなければいけない状況で大宮を率いることになった相馬監督は、就任会見の席で「持てる力を出し切ること」をテーマの一つに掲げた。甘さを捨て、仲間同士が互いに高め合い、アグレッシブに闘う。そうすることで、チームを良い方向へ変えようとしている。
2連敗中の水戸は、貪欲に勝利を狙いにくるに違いない。天皇杯から中3日とあって疲労の残る選手もいるだろうが、快勝した勢いを持続しつつまずは守備で流れをつかみ、チャンスをものにしてホームで歓喜を分かち合いたい。
(粕川 哲男)
大宮アルディージャ | 水戸ホーリーホック | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
ゴール | アシスト | ゴール | アシスト | ||||
河田 篤秀 | 6 | 柴山 昌也 | 6 | 木下 康介 | 8 | 安藤 瑞季 | 5 |
矢島 慎也 | 3 | 小島 幹敏 | 3 | 曽根田 譲 | 4 | 黒石 貴哉 | 2 |
菊地 俊介 | 2 | 河田 篤秀 | 2 | 高井 和馬 | 3 | 大崎 航詩 | 2 |
富山 貴光 | 2 | 茂木 力也 | 1 | 森 勇人 | 2 | 山口 瑠伊 | 1 |
田代 真一 他6名 | 1 | 西村 慧祐 他4名 | 1 | 新里 涼 他1名 | 2 | 森 勇人 他4名 | 1 |
現在6勝4分9敗の勝点22、順位は16位につける水戸。今季は連勝もあれば連敗となる時期もあるなど、なかなか安定しない戦いぶりとなっている。リーグ戦は現在2連敗中で、さらに6月1日に行われた天皇杯2回戦もホームで山口に敗れ、これで公式戦3連敗となってしまった。
一方、毎試合の内容に目を向けると、ポジティブな面も存在する。3年目を迎える秋葉監督が率いるチームは「超攻撃的サッカー」を標榜し、選手たちはアグレッシブなプレーを展開している。攻撃では縦に速いプレーと相手を横に揺さぶるボール回しを使い分け、守備では球際の強度や運動量を前面に押し出すスタイルが定着してきている。また、基本システムは[4-4-2]をベースにしながら、相手の狙いを消すために柔軟に布陣変更も行うなど、秋葉監督の采配の引き出しも増えている。
前節・千葉戦は敵地でリードを奪いながらも、その後は相手の攻撃を受けてしまう「らしくない」姿勢が仇となり、逆転負けを喫した。相手を見て柔軟に振る舞う戦い方は現代サッカーでは不可欠だが、水戸にとってそれはあくまで積極的な方向性で発揮されるべきもの。千葉戦で見せた消極的な守備姿勢は本来のスタイルではなく、今節・大宮戦はアウェイながら攻撃姿勢はもちろんのこと、いま一度、強度の高い守備を取り戻すことが急務となる。
(エル・ゴラッソ編集部)
高校卒業後、すぐに渡欧し複数クラブを渡り歩いてきた“逆輸入”ストライカー。昨夏、加入した浦和では思うように力を発揮できなかったが、今季は水戸で高い得点力を発揮し、現在J2得点ランキング2位の8ゴールを記録している。
190cmの長身を生かしたヘディングに加え、高い技術とスピードも兼備する。大宮相手にも果敢に前へと向かうプレーと、水戸を勝利に導くゴールが期待されている。
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