ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、2025シーズンからアルディージャに加わった新加入選手紹介の第3回をお届けします。
【ライターコラム「春夏秋橙」】平野 貴也
新加入選手紹介 第3回
背番号15の重みを知るMF
期待の長身MFが、ミドルシュートやロングフィードで違いを見せつける。
昨季、特別指定選手としてJリーグYBCルヴァンカップに出場したが、まだ持ち味を発揮しきれていない。「プロ1年目だけど、後がないつもりでやる」――強い覚悟で新シーズンに臨む。東洋大では主将として2024年末の全日本大学選手権を初優勝に導き、日本一を経験。そのリーダーシップに期待が高まる。
背番号15は、「ミスターアルディージャ」斉藤雅人がNTT関東サッカー部時代から背負い、次代の担い手としてジュニア(現U12)1期生だった大山啓輔(現ツエーゲン金沢)が引き継いだクラブの歴史ある番号。この背番号を提示されたとき、悩みもあったが、「雅さんには、『これからの15番像を描けばいい』と言ってもらえたし、啓輔君も『気負い過ぎずにがんばれ』と言ってくれた」と語る。
「NTTがあってアルディージャが生まれ、その流れの中で自分は小学生のころから高校までアカデミーで育ってきた。RB大宮アルディージャへと変わっていくけれど、僕が学んできたものは変わらない。少しでも歴史を受け継ぐことができたらいい。背番号という形ではあるけれど、それを自分が背負ってプレーし、サポーターの皆さんに少しでも喜んでもらえたらうれしい」と、覚悟を決めた。
歴史を受け継いだ、新時代の背番号15に注目だ。
Profile
2002年7月6日生まれ、埼玉県出身。187cm/79kg。
新座西堀キッカーズ→大宮アルディージャジュニア→大宮アルディージャJr.ユース→大宮アルディージャU18→東洋大を経て、今季より大宮に加入。
1対1の守備に強い執着を見せるCB
同期の中山昂大と同じく、ジュニアからU18までアカデミーで育った生え抜き。
年末年始は実家で過ごし、普段から試合を観に来てくれる両親や兄、姉からのエールを受け、プロとしての挑戦に身の引き締まる思いを抱いたという。育ったクラブでのプロ生活が始まることについて、「昨季のJ3優勝メンバーに新戦力が加わり、チームがさらに良くなっていく雰囲気を感じている。新シーズンの練習が始まって、もう大学生ではなく、プロサッカー選手なんだという実感が湧いてきた。開幕戦のスタメンを本気で狙う。たくさん試合に出て、常にチームの力になりたい」と、新たなステージへの決意を語った。
CBとしてはサイズのあるタイプではないが、「1対1の守備で体を張るのが特長。ボールを奪い切る。気持ちを前面に出して、チームのために何が何でも守る姿を見せたい」と、球際の戦いへの強い執着をのぞかせる。それは、単に守備者として求められるからではない。幼いころからクラブを見て育ち、「自分が憧れ、目指してきた選手像」だからこそだ。
アカデミーで培った攻撃時のビルドアップでは、ロングパスの配球や持ち上がりなどでアクセントを加える。そして、サポーターを沸かせる最大のプレーとなる“得点”にも意欲を燃やす。
オレンジの血を引く最強の盾。そのプレーに期待が高まる。
Profile
2002年5月19日生まれ、埼玉県出身。179cm/75kg。
大宮アルディージャジュニア→大宮アルディージャJr.ユース→大宮アルディージャU18→筑波大を経て、今季より大宮に加入。
ガーナにルーツを持つ期待の大型ストライカー
長身でスピードがある、ワールドクラスの高いポテンシャルを秘めるストライカー。裏への抜け出しや、ゴール前への飛び込みから、積極的にゴールを狙う。
プロ仕様のフィジカルを完成させるには時間は必要だが、ゆっくり待つつもりはない。「世代別代表で一緒にプレーした選手は、自分より早くプロデビューしている。そこに追いつかないといけない。これから、プロとしてどういうプレーで存在意義を示せるか。まずは試合に出ることが大事だけれど、試合に出たらゴールを決めて、チームを勝たせたい」と、虎視眈々とプロデビューとゴールを狙う。
試合経験を積んでプロのスピードやパワーに慣れたときが楽しみだ。
年末には1週間ほど父の母国であるガーナを訪れた。幼少期に行ったことがあるが、記憶はほとんどなく、ほぼ初めての訪問のような感覚だったという。首都アクラから田舎町へ移動すると、信号機のない未舗装の道や、衣食住がそろわない環境で生活する人の姿が目に留まった。
「自分のルーツを知るというか、いろいろなことを感じた。日本では衣食住が整っていて、すごく良い環境でサッカーができている。父の育ちを知り、プロになって何かしら恩返しをしたい気持ちが強くなった」
大宮から世界へ。大型ストライカーの覚醒が、いよいよ始まる。
Profile
2006年5月26日生まれ、埼玉県出身。192cm/80kg。
慈恩寺キッカーズFC→さいたまシティノースFC→大宮アルディージャU15→大宮アルディージャU18を経て、今季よりトップ昇格。
平野 貴也(ひらの たかや)
大学卒業後、スポーツナビで編集者として勤務した後、2008年よりフリーで活動。育成年代のサッカーを中心に、さまざまな競技の取材を精力的に行う。大宮アルディージャのオフィシャルライターは、2009年より務めている。